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2004.02.03
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法律・狭山部会・学習会報告
2003年12月1日
国際人権条約と国内判例研究

丹羽 雅雄 (弁護士)

 今回報告されたのは、第二次世界大戦中に日本の軍人・軍属として従軍中に戦傷をうけた朝鮮半島出身者らが、戦傷病者戦没者遺族等援護法に基づく援護を受けるべきことを求めた一連の事案である。これらは内容上極めて類似の事案であるが、同法附則の性質、援護の性質、さらには在日韓国人の戦後補償に関する位置付け等において、それぞれ若干のニュアンスがある。これらの論点に関して、詳細な解説がなされた。

石成基・陳石一東京訴訟

 本件において東京地裁は、援護法が、その対象者を日本国籍者に限る趣旨から、国籍条項を設け、当時国籍の帰属が不分明であった朝鮮半島出身者らを除外するために本件附則の戸籍条項を設けたと判示した。そしてこれらの者に対する補償は、様々な要素を考慮した政治的判断を要するとし、制定当初は韓国政府との特別取極により解決すべきこととなっていたから、かかる除外には十分合理性があり、このことから、憲法第一四条第一項、さらには社会権規約及び自由権規約の平等規定の違反はないとした。さらにかかる取極(日韓請求権協定)が締結された後も、別途補償立法措置が執られなかったとしても、当然に本件附則を廃止して援護法を適用すべきことにはならないとした。

 東京高裁は、判断の枠組みは上記とほぼ変わらず、加えて、規約の解釈において最終所見や見解に関しても、内容ではなく法的効力という形式面で排斥した。但し、在日韓国人が選択の余地なく日本国籍を喪失し、補償を受けるために採るべきすべがなかったとし、同法適用開始当時は日本国籍を有していたと解されるので、日本国籍者に準じて処理するほうが実態に即してより適切だとし、同法適用の道を開くといった、在日韓国人戦傷病者に相応する行政上の特別措置を執ることが強く望まれるとの所見を述べた。

 最高裁においても地裁とほぼ同様の判断を行い、請求権協定締結後も本件附則を存置したことは高度な政治的判断に立って行使されるべき立法府の裁量の範囲を著しく逸脱したものとまではいえないとして、憲法違反の主張を斥けた。

鄭商根大阪訴訟

 大阪地裁は、本件附則が、旧植民地出身者への同法適用を排除する趣旨から設けられたとし、当該附則の改廃など立法措置が講じられない限り継続するとした上で、かかる附則が憲法第一四条第一項に反するか否かを吟味した。その際、上記事案と異なるのは、被告国の主張の合理的根拠を吟味の対象とした点である。国籍を理由に一律に同法の適用を除外することに合理性は乏しいが、二国間協議による解決が予定されていたので、立法時においては第一四条に反するものであったとはいえないとした。

 しかし、日韓請求権協定が締結された後には、補償の道が閉ざされたのであって、在日韓国人について当該条項によって補償給付を行わず、重大な差別を生じさせている取扱いは、憲法第一四条に反する疑いがあるとした。ただ、違憲の疑いがあるとしても、日本国民と同様の援護が与えられるべきとはいいがたいし、いかなる内容の援護を行うかはやはり立法府の決定を待たざるを得ないとして、却下処分取消請求には理由がないとした。

 大阪高裁もまた、請求権協定締結後も補償対象から除外されてきたことは由々しき事態であって、早期に解決されるべきとの見解に十分理由があるとしつつも、国が代替的な措置を採らないことが違憲であるとまではいえないとした。

 最高裁の判断は、前記石・陳訴訟最高裁判決となんら変わりない。

姜富中大津訴訟

 地裁及び最高裁の判断は、前記石・陳訴訟の地裁判決・最高裁判決と変わりないが、注目すべきは大阪高裁判決である。まず、両規約の解釈基準は、憲法第一四条の解釈においても十分尊重すべきであるとした上で、当該附則の合理性を吟味する。鄭訴訟の下級審判決から更に踏み込み、国会が広範な立法裁量を有しているとしても、このことから当然に戸籍条項の合憲性が導かれるわけではないとした。

 その上で、援護法の本質を国家補償にあるとし、援護を受けるか否かはかつて軍務を提供したか否かという客観的基準によって決せられるべきだと述べた。立法当初は特別取極が予定されていたことから憲法上容認されたとしても、請求権協定締結後には、できるだけ速やかにこれらの規定を改廃したり、新たな補償立法を行うなど適切な措置を採り、憲法第一四条に適合するものに是正することが要請される、とした。

 自由権規約との関係においても、援護を受けるべき地位とは直接には関係のない国籍の有無によって法的取扱い著しい差異を生じさせる不合理な差別として、規約第二六条に反する疑いがあると判示した。しかし、いかなる措置を執るかは立法府の裁量に委ねられているとし、控訴を棄却した。

 以上紹介された中で、やはり大阪高裁・大阪地裁の判断が重要であるのは、本件附則の立法理由として主張された論拠そのものについて、それぞれ合理性を吟味している点である。およそ法である限りは何らかの立法理由があるはずで、それを示しさえすれば合理的だといえるならば、憲法違反は原理的にありえまい。憲法との適合性が問題となる事案においては、当然かかる論拠の合理性にまで遡って検討すべきであろう。また、要件論において違憲・規約違反の疑いを認めつつも、効果において立法裁量論により請求を斥ける点で、大阪高裁・地裁の判断にも問題があろう。

(文責・李 嘉永)