調査研究

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03.10.15
<部落解放・人権教育啓発プロジェクト>
 
部落解放・人権教育啓発プロジェクト
2003年9月16日
人権教育のための国連10年について第1次を総括し、
第2次の必要性を考える

(報告)林伸一(槻の木高校)
廣瀬聡夫(人権NPO法人ダッシュ理事長)
谷山泰一(大阪同和・人権問題企業連絡会専務理事)

(第一報告)学校教育の立場から

はじめに

  大阪府立学校人権教育研究会(以下、『府立人研』)の前身、大阪府立高等学校同和教育研究会は、1995年度、それまでの5つの研究部会、すなわち、教科、生活指導、進路、定時制・通信制、同和教育推進という体制を、ホームルーム実践、進路保障、学力保障、研修交流の4つに改変した。

  この改変の特徴は、教科が学力保障に、同和教育推進が研修交流に名前を変えているところによく出ている。学力保障という表現には、学力の中身を問うことと被抑圧・被差別の生徒の学力を向上させるという二つの課題を追求するという意味がこめられている。

改革の柱

「第一次リフレッシュ委員会」は、改革の基本方針で次の5つの課題を提起している。

  1. 同和教育を学校運営の基本に位置づける。
  2. 「同和対策審議会答申」にある「国民的課題」を学校全体の責任において担うべきである。
  3. 同和教育は特設のHR等に限定されるものではなく、すべての教育活動と連動すべきである。
  4. 「差別の現実に学び」つつ、実践しなければならない。
  5. 地域住民(特に、被差別の立場にある人々)の声に耳を傾ける「地域連携」の方向が打ち出されるべきである。

  また、部落問題学習については、「知識注入型」の部落問題学習ではなく、一人一人の生き方をも問うようなとりくみにするべきだということが提起されている。他の人権問題とかかわっては、「他の人権問題もカバーするようなカリキュラム・内容・方法が求められている」であるとか、「『同じであること』ではなく『違いがあること』が社会的な価値を持つというようなスタンスに転換する必要があるという提起がある。

活動と組織はどのように変わったか?

  この提言の中には、今日、私たちが追求しようとしている課題がほとんどすべて含まれている。この課題をひと言で言うと、「同和教育を人権教育という名の下に発展的に吸収し、それを学校教育全体の中に位置づける」ということになるだろう。

 なお、「第一次リフレッシュ委員会」の提言の背景に「総合学科」の誕生と新たな授業「産業社会と人間」の新設が、また、「第二次リフレッシュ委員会」の提言の背景に「総合的な学習の時間」の新設があることも確認しておくべきであろう。

成果

  1995年度以降の府立人研活動を振り返ってみると、つぎの諸点で拡大が見られる。研究交流部員登録は300名を超え、研究部会や交流部会に初めて参加する人たちも増えている。「産業社会と人間」や「総合的な学習の時間」といった通年の授業を、人権教育の視点から継続的に取り組んでいる学校がいくつかある。

  小・中・高連携や地域連携の意義についての理解がこれまでよりも広まった。研究会活動で交流され多くの関心を集めた教材やプログラムが出版され、これまでよりも多くの人たちに伝えられた。『おおさか発総合学習への道』や『やってみよう!総合学習』がそのような成果のひとつである。

府立人研の活動にかかわる課題

  研究会の活動との関係では、府立人研や大阪府人権教育研究協議会などがいろんな活動をしているが、研究機関と現場をつなぐとか、市民団体との取組を共同でやるという枠組みはきわめて作りにくい。

  例えば、NGOが広範囲に、大阪だけにとどまらず行政の単位を超えて広範囲にいろんなかかわりを作っていくということができていない。これを大阪府の一つの同和教育・人権教育の研究会が担うとなると、課題が大きすぎる。これをつないでくれるようなNGOが求められているのではないか。

  それと人権教育は非常に広範囲にわたる内容だが、例えば、進路指導の研究会が大阪府にもある。各教科の研究会もある、生活指導の研究会もある。こういうふうな研究会などで人権教育の視点からの取組というものはどの程度、意識されてなされているのか、総括する必要がある。

  例えば、就職慣行の見直しという点について、進路指導研究会がなんらかの提起や研究・実践をおこなう必要があると思う。学力保障で言えば、教科の研究会がどの程度それを担ってどういうところまで達成できたのかというところを定期的に評価して報告していく必要があるのではないかと思う。その点については、あまり情報が届いてこない、そういうところが弱い点ではないかと思われる。それぞれの機関が協力して取り組まねばならないのだが、それをつなぐようなネットワークの形成が不十分である。


(第二報告)草の根NPOの立場から

私の問題意識

  • 市民の素朴な感情として、「国連の行動計画」は、それほど重要なのか?
    「国連の決定」「法律」「答申」を根拠にして、人権教育を位置づけることの妥当性と危険性(市民の自己実現・人権の伸張にとって、「国連の決定」を知ることがプラスに働くことが必要)
  • 人権教育の二面性(広く薄く全体に広める/狭く深く個別を深める)、それを担うセクターの違いを踏まえる。

ダッシュがめざす「これからの人権教育」

  • 草の根NPOとしての立場から(ボトムアップ型の人権教育を担う立場)
  • 自分の人権が豊かになってこそ、自分事の人権教育。他人の事例を学ぶ・知るだけでは、他人事の域を出ない。他人の事例から、自分の人権を豊かにさせるヒントや気付きを得られるような出会いやネットワークを作れるか?(ex.ダッシュツアー)
  • ダッシュが考えるキーワードは、
    1. 人権を豊かにするのは自分自身(人権とは発展する概念)
      固定した人権水準に追いつく(格差是正)ではなく、いかに自分らしく人権を伸ばしていくか。
    2. 部落問題(他者の人権問題)を鏡に自分の人権向上を
  • 部落とのマイナスの出会いからプラスの出会い・気づきへの転換へ
  • 同和行政の特別措置(部落だけ)から一般施策の有効活用への移行(部落での工夫を一般地区に広げる可能性がますます広がっている)
  • トップダウン型とボトムアップ型の連携(人権教育における行政とNPOの協働)が必要。→「新しい人権教育のしくみづくり」の提唱

第1次「国連10年」の総括の視点

トップダウン型(行政主導)の量・質の検証とともに、ボトムアップ型(NPO主導)のモデル化・支援のシステム作りこそ重要ではないか?

  1. 民間レベルでの「行動計画」策定状況の集約と達成状況の点検
  2. 行政「行動計画」の中に(自らの限界をふまえて)民間(NPO)の人権教育の発信を支援する指向性があるか?(一般的な「連携」ではなくて、教材・事例作りの「助成」「委託」)
  3. 民間(NPO)側に、自らの取組を「人権教育」として発信するスキルがあるか?

具体的提案

  • 行政の第2次行動計画が検討される2004年末の時点で、民間(NPO)側の人権教育モデル(事例)がどれだけ多く出ているかが「第2次行動計画」の分かれ目、あるいは、民間側のモデルを促すシステムを確立すること
    1. 各団体が得意とする「人権教育」メニューの募集(コンペ)
    2. 10年間の行動計画を策定する団体に、単年度でない中期的な支援制度の確立(単年度予算主義との調整)
    3. NPOによる主体的な総括の場づくり(NPO部会)
    4. 当面、識字や日本語教室におけるエンパワメントの事例を教材化できないか?(「国連識字の10年」記念で)

(第三報告)企業の立場から

大阪同企連活動と「人権教育の10年」

  「部落地名総鑑という差別図書を購入したという行為そのものだけを反省するのではなく、購入すること自体の差別性に気づかないという、企業の差別体質そのものに気づき、反省しここを改める」…これが、大阪同和・人権問題企業連絡会(以下、『大阪同企連』)発足の原点である。結成以来、「雇用」と「啓発」の二本柱について地道に取組を進めてきた。

  大阪同企連の活動の目標とするところは、「企業の差別体質の払拭」と「人権尊重の企業経営の確立」である。「人権教育の10年」の考え方にそって言えば、企業というひとつのエリアにおいて、「人権尊重の態度の育成」「人権文化の構築」をめざして、「雇用」と「啓発」への取組という手段をもって行動してきたといえる。

  部落地名総鑑事件を契機に結成した大阪同企連だが、結成21年後(1998年)にまた第二の部落地名総鑑事件といわれる「アイビーリック社」事件への関与というまことに遺憾なつらい出来事があった。我々は、次のような反省を組織としておこなった。

  もう第三の事件は決して許されることではない。どうすればいいのかと考えると究極の答えは一つと思っている。「人権教育の10年」で提唱されているように、「生涯にわたる学習」を通じて「人権尊重の態度を育成」して、「人権文化の構築」を企業内において実現するしかない。2003年度「重点活動方針」に次のように書かれている。

  「今こそ、担当者一人一人が人の命に関わる、この人権問題という崇高な課題に取り組んでいるという自負心をもち、その活動に喜びと生き甲斐を感じるような活動を自身の生き様として実践する、そういう熱い心の通った活動が必要と考える。…」

  これは決して、「人権教育の10年」を意識して書かれた方針ではないが、今の同企連組織・会員企業担当者それぞれの思いである。「人権を学ぶ」から「人権に学ぶ」そしてさらに、「人権での学びを生き様に実践する」という考え方で、まさしく「人権教育10年」と同じ考え方ではないかと感じている。

企業組織・企業における人権担当者から

  「人権教育の10年」が提唱されたときには特段の行動計画も立てなかった。そういう企業組織や企業の人権担当者が言うには大変都合のいい話かもしれないが、一次の「人権教育の10年」の考え方をより具体化というか、取組を深めていくという視点から第二次の「人権教育の10年」として、今回は企業をよりクローズアップして頂きたい。

  たとえば、行政へは、企業が変わるきっかけ作りの施策推進、仕組み作りの促進を要請していく、企業へは、国連が推進しているグローバルコンパクトへの積極的な参加要請などをおこなっていく、その他、人権問題に関する社会での様々なシステム・制度に企業が積極的に対応していくように要請するような提唱がされたらいいと思っている。

  結論として整理すると、企業はこれまでこの人権教育の10年を特別に意識した活動はしてこなかったといえる。その意味で、「人権教育の10年」の企業への浸透度は低かったと言わざるをえない。しかし、現実に、企業の果たす役割の大きさも十分に自覚しているし、また「人権教育の10年」の考え方についてもほとんど賛同できるので、取組の程度に差はあるものの日常の活動もこの考え方にそったものとなっている。したがって、これからはより企業を意識した、より企業が意識せざるを得ない第二次の「人権教育の10年」の提言が必要ではないかと考える。

(文責:事務局)