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2004.01.28
世界人権宣言56周年記念大阪集会が開催されました。
2004年12月7日 大阪国際交流センター

「人権教育のための国連10年」の評価をふまえ
「人権教育のための世界プログラム」の創造を

 2004年12月10日の国連総会で、2005年1月より「人権教育のための世界プログラム」に取り組む決議が採択されました。

 この採択に先立ち、当連絡会議は人権教育をテーマに世界人権宣言56周年記念大阪集会を開催、約910名が参加しました。集会終了後の基調報告と集会アピールが採択された後、国内で人権教育や人権研修に取り組むゲスト12名によって4つの分科会にわかれ、各分野における「人権教育のための国連10年」について議論しました。

  友永健三(当連絡会議事務局長、部落解放・人権研究所所長)が、「人権教育のための国連10年」の総括を踏まえ「人権教育のための世界プログラムの創造を」をテーマに基調報告を行いました。

  まず、「人権教育のための国連10年」の成果として、<1>人権教育の内容に関する理解と重要性に関する認識が高まった、<2>被差別者の人権が重要視されだした、<3>さまざまな分野でばらばらに取り組まれていた人権教育の連携を構築した、<4>各方面での推進体制や行動計画が整備されだしたことなどをあげました。そして残されている課題として、国、自治体によって取り組みにばらつきが見られるなどを指摘しました。

  人権教育を継続するため、今年1月から「人権教育のための世界プログラム」がスタートすることにあたり、「国連10年」で提起され、また各方面・各分野で取り組まれてきた積極面を活かしていく必要性と「世界プログラム」で焦点化される人権教育に力点をおきながら、残された問題点を克服するよう国連などへの働きかけを行っていくことが今後求められると強調しました。

  基調報告後、「人権教育のための国連10年」を踏まえ、「人権教育のための世界プログラム」を創造していくための集会アピールを岩崎江津子さん(大阪府立学校人権教育研究会)が提案し、採択されました。

  その後、4つの分科会(A:学校からはじまる人権教育、B:コミュニティエンパワメントの人権教育-学びから行動へ-、C:職場における人権・啓発研修の取り組みと課題、D:自治体が発信するこれからの人権教育)が開かれました。

  なお各分科会の報告については、助言者からの発言をもとに全体概要についてのみ掲載しました。

  詳細の分科会の報告については部落解放・人権研究所発行の『ヒューマンライツ』3月号に掲載予定です。ぜひご覧ください。(文責 事務局)

分科会A 学校からはじまる人権教育

報告者/ 渡辺 信一さん(箕面市立萱野小学校)
檜本 直之さん(大阪府立松原高校)
助言者/ 桂 正孝さん(宝塚造形芸術大学教授)

これからの人権教育のあり方

 日本国内をみると、人権教育に取組んでいる自治体は3割ほどでまだまだ少なく、国にも人権教育をやっていかないとだめだという姿勢がでています。これは、この間の取組みの成果があるといえると同時に、今の子どもの状況をみてそうせざるを得なくさせていることがあります。

  「世界プログラム」の第一段階として初等・中等教育での人権教育に力をいれようということが打ち出され、またこの6月に出された人権教育にかかる指導方法等の調査研究会議のとりまとめでは「体得する力」や「人権感覚」の必要性が書き込まれていることを受け、今日、生きること、学ぶことの意味をつかめないでいる子どもたちがいる危機的状況をどうとらえていくのかの問題提起が助言者の桂さんより2つの報告を踏まえて出されました。

  そして、人権を「居場所」として考えた場合、他者と信頼関係を築き、そして自尊感情やアイデンティティを確立することのできる「居場所」が奪われずに子どもたちにその「居場所」を取り戻していくことが人権教育であるということをあらためてこの分科会の活動報告を受けて確認することができました。

二つの報告を受けて

  萱野小学校も松原高校も上記で述べたような「居場所」を取り戻していくために、地域の力をかりた人権教育のネットワークづくりを行っています。教育をまさに地域全体で育ててきました。また、教科学習と総合学習、この2つがあってはじめて私たちの教育は完成します。

  これは「自分が自分を立たせること」を意味します。総合学習を、「生きることを励ます学習にしよう」、「人権総合学習にしよう」というのが二人の報告でした。所得間格差など教育の力だけでは解決できない問題もあるとは思いますが、自分がどこにいるのか、どう生きたらいいのかを励ませるような関わりを作る必要があるといえます。

  まさにこれが「居場所」づくりです。「求める、伝える、つながる」という萱野、松原の取組みは「学校発人権のまちづくり」という形で、失った家庭の教育力、学校、職場、地域の教育力を取り戻そうとする大変すぐれた実践であるということで、集会終了後も情報共有や質問など活発な議論が行われました。

分科会B 「コミュニティ・エンパワメントの人権教育-学びから行動へ-」

報告者/ 広瀬聡夫さん(人権NPO法人ダッシュ)
笠原秀己さん(世界人権宣言八尾市実行委員会)
助言者/ 阿久澤麻理子さん(兵庫県立大学教員)

「草の根」の分科会をもつ意義

  この分科会は学校でも自治体でも企業でもない「狭間の分科会」であると、助言者である阿久澤さんは述べましたが、その意味するところは、市民がボトムアップでつくりあげていく人権教育は他のエージェントが行う活動とどう差異化されるのかが問われているということです。

  旧組織を市民活動団体として再構築し、独特な活動を行っている団体の2人より、市民活動に何が求められているのか、またその当事者の思いはいかなるものなのか。

  市民が主体となった学びの場やネットワークづくりや、人権教育について政策提言していくといった積極的な活動を行うなかで見えてきたことが報告され、行政任せではない草の根人権教育のこれからの方向性について活発に議論されました。

市民社会が行う人権教育とは

  日本は実は世界的に見ると人権教育の制度化は進んでいる方です。しかしやはり政府がやることには限界があるのではないでしょうか。市民活動にしかできないことがあるはずです。では、市民社会は何をしていくのか。

  それは<1>モニター&評価-その制度はちゃんと中身を持っているのか、<2>当事者権利学習を広めていくこと-当事者がステークホルダーであることの自覚、<3>行政の下請けではなくパイロット的な取り組みの発信・提案をしていくことではないでしょうか。

草の根団体の活動評価についてー質疑応答よりー

  質疑応答では、主に活動評価を巡って議論がされました。広瀬さんは、行政のアウトソーシング的経済効用だけではなくどれだけ人が元気になったか(エンパワメント)が大切だろうと指摘しました。笠原さんは、「行政がするよりエエやんと周りから言われることかな」と回答しました。

  そして2人とも、行政ではできないものを創りあげていこうとする思いを共有していました。そして制度が大切だというのは間違いないが、その制度と当事者とのギャップをどう埋めていくか、そこに市民活動の果たす役割があり同時に課題でもないかという阿久沢さんの言葉でまとめられました。市民活動だからこそできる人権教育の重要性がさらに認知され、追求されなければならないでしょう。

分科会C 職場における人権・啓発研修の取り組みと課題

報告者/ 安部 隆さん(大阪同和・人権問題企業連絡会、みずほ信託銀行)
川口喜代子さん(東京人権啓発企業連絡会、ソニー(株))
助言者/ 清水 宣行さん(部落解放・人権研究所企業部会長)

人権問題への取り組みの重要性

  世界規模での個人の人権尊重の実現を考えるとき、市民生活、社会、経済に大きな影響を与える企業は、重要なアクターとなります。国連と多くの企業によって、人権・環境問題に関する取り組みを約束する

  グローバルコンパクトが提唱され、「企業の社会的責任(CSR)」の浸透が進む今日では、多くの企業が、人権問題への取り組みの重要性を認識し、職場での

  人権教育を行い、人権尊重の視点を据えた業務を行うようになってきました。この分科会では、企業の人権教育・啓発活動において、特に先進的な取り組みを行っている二社の報告をもとに、今後の職場・企業における人権教育の展望について活発な議論が行われました。

企業存続のための欠かせない取り組み

  みずほ信託銀行、ソニーによる、同和・人権問題への取り組み、特に職場における人権教育や啓発活動は、まさに画期的な手法でもって徹底的に行われており、新しい視座を与えたことが指摘されました。しかし、両者とも、過去の人権侵害の「罪滅ぼし」的な意味合いから始められたものであったため、そのような意識で企業の人権啓発活動を捉える空気も残っていることは否めません。

  しかしながら、国連によるグローバルコンパクトが多くの企業との間に締約され、ISOで「企業の社会的責任」が規格化される今日において、企業の人権教育・啓発活動は、「贖罪」としてではなく、もはや存続のために欠かせない取り組みとなっていくことが予想されるとして、分科会は締めくくられました。

分科会D 自治体が発信するこれからの人権教育

報告者/ 田中耕太郎さん(大阪府企画調整部人権室)
和田 圭史さん(門真市市民生活部人権政策室)
助言者/ 上杉 孝實さん(京都大学名誉教授)

自治体が策定する人権教育行動計画

  この分科会では、「人権教育のための国連の10年(以下、国連10年)」を受けて、独自に行動計画を策定している大阪府と門真市の取り組みについて、各自治体担当者からそれぞれ報告が行われました。

  大阪府は、「国連10年」を受け、1997年3月に全国に先駆け、「人権教育のための国連10年大阪府行動計画」を、2001年3月には後期行動計画を策定しています。現在、後期行動計画を受けて、新計画の策定作業中です。

  これに対して、門真市は、「国連10年」と大阪府の行動計画を受けて、1999年に第1次10年「門真市人権教育推進のための行動計画」を策定し、第2次計画として、2004年に「門真市人権教育・人権啓発推進基本計画」を策定しています。

これから求められる共通課題

  大阪府と門真市の取り組みの報告を受けて、考えられる今後の課題として、助言者の上杉さんは次の5点をあげました。

 すなわち、自治体の共通の課題として、<1>全庁的な取り組みへ向けた仕組みづくり、<2>同和問題等の個別課題に関わる調整部署・窓口の整備、及び<3>人権教育を進めていく上での自治体の裁量の問題、です。また、<4>府のレベルとして、市町村での取り組みの促進、企業との連携、及び国への働きかけの問題と、<5>市のレベルとして、地域での取り組みを促進していくための拠点の充実があげられます。

  なお、人権教育では、意識の問題が大きいですが、意識を規定しているものに向ける教育もきわめて重要です。この点、人権教育には、日常的な行動様式や生活習慣等といった意識を支えているものに目を向け、現状を変えていく状況をつくり上げることも求められていると言えるでしょう。