1.人権市民会議 −設立の趣旨・目的
21世紀は、人権の世紀であると語られていますが、日本や世界の人権状況は、はたして改善されたでしょうか。残念ながら、現状はそのようなものではありません。そのような認識にたって、私たち人権市民会議は、日本社会で人権課題を抱える当事者団体と、個人が連帯して、法制度に人権の視点からメスを入れなければ日本の社会は変わらないと考えて集まりました。私たち人権市民会議が重視した点はいくつかありますが、その第一は、人権侵害や差別の
実情を踏まえて、当事者の視点を大事にするというものです。また、人権と平和の密接不可分性や、アジア・太平洋の人々との協調を重視し、多民族・多文化の共生社会と人権文化を定着させていきたいという思いを持って、提言を取りまとめたところです。
2.人権市民会議の活動概要
2006年3月30日の結成総会では、市民会議に参画した人々が思いを語り合うシンポジウムを行いました。また、7月や9月にも、同様のシンポジウムを開催いたしました。9月のシンポジウムでは、中間的な提言を公表し、会場や、メール・ファックスを通じて多くの方々から意見を頂きました。これらの意見の重要な部分は、今回の提言に盛り込んでいます。
3.「日本における人権の法制度に関する提言」の策定方針
この提言の策定にあたっては、長年培われた成果を持ちより、緊急かつ実現可能な提言を提示することを重視しました。また、政府や自治体とは一定の緊張感を保ちつつ、協力できることは協力するというスタンスを持ち、その上で実現可能な提言を目指すこととしました。
4.提言の内容
提言の枠組みは、現状認識、基本的視点、基本的枠組み、そして「私たちの提言」の4つの部分から成っています。
現状認識としては、多くの人権侵害や差別が存在し、中には社会問題として認められてすらいないものがあるということです。そして、一定の施策は行われましたが、解決していない人権課題も山積しています。また、現状では、人権侵害や差別をなくす取り組みが社会全体で共有されていないという段階です。逆に近年、新自由主義や排外主義、反テロ活動を名目とした人権を損なうような法制度が新たに制定されており、大変危機感を持っています。また、それぞれのマイノリティは、分断され、周縁化されているという認識を持っています。そこで、それぞれのマイノリティが連帯し、法制度の変革を迫る必要があるという認識に立っています。
基本的視点としては、マイノリティの視点、下からの視点に徹底して立っています。それぞれのマイノリティが、意思決定の場にきちんと参画すべきだという点を重視しています。そして基本的枠組みとして、現行の法体系の問題点を指摘し、それぞれの人権侵害や差別に共通する課題を発見し、解決していくことを重視しました。また、人権侵害や差別の被害者の原状回復と補償、自立の支援、人権侵害の再発予防、人権侵害予防手段としての教育とカウンセリング等を総合的に行う等、実効性のある人権救済制度の確立に向けた提言を目指しました。
具体的な提言として、人権救済に関する当面の課題と、人権の法制度に関する基本的課題とに分けてとりまとめました。当面の課題としては、国内人権機関を設置し、人権相談が気軽に受けられ、差別を受けた人が納得いくような救済機能を持たせることを提言しています。同様に各自治体でも総合的な人権相談・救済システムを構築するよう求めています。さらに、国際法上の個人通報制度も利用できるようにすべきとしています。
基本的課題としては、まず、差別の要因ともなっている法制度、とりわけ戸籍制度と入管制度を、人権の視点から抜本的に見直すことを求めています。さらに人権基本法と当事者別の差別禁止法の制定、そして行政上の総合的人権施策の実施、当事者がエンパワーされるような計画的な人権教育・啓発の推進、そして国際人権システムへの積極的な活用、さらには東アジアとの連帯を求めています。
5.残された課題
現在、当事者団体や人権課題を抱えている人々との連帯はまだ不十分です。これをどう進めていくかは大きな課題です。また、提言の内容をよりわかりやすくしていくことも課題です。その上で、この提言を国会や内閣に持ちこみ、説明し、理解を求める活動を続けていきたいと考えています。