〈前科者〉差別【ぜんかものさべつ】

 当該社会の法体系に違反し刑罰を受けた者と、その家族・親族とが,その受刑の前歴の事実をもって受ける不当な差別。この種の差別は,受刑を終えた更正中の前歴者が,一度犯した罪のもつ反社会的・悪徳的な性質により〈前科者〉と呼ばれ,その前歴を払拭できず,ひいては自己の人権さえも主張できないというもので,差別の不当性が主張できにくいという点では差別事象のなかで特別な位置を占めている。一般的には〜芦覆鬚發津人が受ける差別と,△修硫搬押親族が受ける差別とがあり,多くは就職差別や結婚差別の形態をとりがちである。〈前科者〉ということばは,わが国では単なる犯罪者ということば以上に,負の*スティグマの代表をなしており,〈悪人,乱暴者,冷酷者,人殺し〉というイメージを導き出しやすい。したがって,いったん〈前科者〉のスティグマを取得すると,その当人は,就職や結婚などさまざまな形で差別を受けることになる。わが国で起こった差別訴訟事件としては,弁護士が行なった前科・犯罪歴の照会が原因となって解雇された事件がある。そのうえ,警察当局からは事件発生のたびに参考人とみなされやすく,真の更生が難しい実情にある。このため,なかには,〈前科者〉というスティグマの重圧を除去するために,入れ墨の刻印などで強化し,やくざなどの職業的犯罪集団に入る者もいる。また,こうした負のスティグマは,時として因襲的な〈血統〉や〈血筋〉という観念と結びついて,犯罪前歴者の家族や親族に深刻な差別を与えることがある。そのため現在では,受刑者の刑務所内での人権問題だけでなく,より広く,施設外の一般社会における犯罪前歴者とその家族の人権保護施策が重要になっている。

参考文献

  • 那須宗一編著『犯罪統制の近代化』(ぎょうせい,1976)
  • 川崎卓司「更生保護と地域社会」(『犯罪社会学研究』3号,立花書房,1978)
(辻 正二)

トップ   差分 リロード   一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:28 (1411d)