アファーマティブ・アクション【affirmative action】

 アメリカ合衆国における人種マイノリティ,女性,障害者,ベトナム退役軍人,障害をもつ退役軍人に対し,雇用,教育,事業契約,その他の社会参加,社会進出の機会を増進する目的で行なわれるさまざまな積極的機会均等施策【せっきょくてききかいきんとうしさく】。積極的差別解消策【せっきょくてきさべつかいしょうさく】とも邦訳される。EU諸国では類似の施策を、ポジティブ・アクションと呼ぶ。執行形態により次の3種類に大別できる。(1)大統領執行命令,連邦法,州法,州規定によるもの。アファーマティブ・アクションは1965年にジョンソン大統領が発令した大統領行政命令11246号で最初に導入された。これは連邦政府との契約業者に義務づけられる雇用の機会均等計画である。その執行機関として監視機能をもつ連邦契約遵守局(OFCC)が設立され,実践的な行政システムも整備された。67年には<人種,肌の色,宗教,出身地>による差別禁止規定に<女性>が加えられ,68年にOFCCは最初の施行ガイドラインを発表した。そのなかで指摘された主要なポイントは,.▲侫 璽泪謄ブ・アクションとはできる限りの誠実な努力をもって,雇用機会の平等化を目指す,結果を重視する一連の手続きである,△修譴魑遡海鼎韻蕕譴襪里蕨∨政府契約業者およびその下請け業者で,50人以上の従業員を持ち,連邦との契約額が5万ドルを超えるものである,職種,部門ごとにマイノリティや女性の活用状況分析をする,こ萢冑埖が見られる職種,部門ではその不足を減らすための努力に向けた目標と達成プランを設定する,ことであった。73年のリハビリテーション法,74年のベトナム退役軍人社会復帰援助法によってアファーマティブ・アクションの適応範囲グループが広がり,77年の連邦公共事業雇用法では連邦補助金の10%をマイノリティ所有の企業にあてることが定められた。全米各州では人種,性,宗教,年齢による教育,雇用,住居などの差別を禁止する法が制定されているが,すべての州がアファーマティブ・アクションを制度化してきたわけではない。(2)裁判所命令によるもの。裁判所が差別を認めた場合,公的,民間を問わず被告に不当な差別行為を禁止させると同時に,アファーマティブ・アクションの実施を義務づけることがある。(3)自発的なもの。法的に義務づけられているわけではないが,民間企業,非営利団体,学校などが社会的責任や多様性の尊重などの観点から自発的にアファーマティブ・アクションを採用しているところも多い。

 78年の連邦最高裁のバッキー判決を皮切りに、アファーマティブ・アクションが白人,男性に対する逆差別ではないかという論争は90年代に入ってさらに白熱した。アファーマティブ・アクションが法のもとでの平等を定める憲法修正14条や公民権法詐髻き讃鬚飽稟燭垢襪否かが論争の焦点となってきた。カリフォルニア州では人種マイノリティと女性に対するアファーマティブ・アクションを廃止する法案が96年に住民投票によって成立した。この動きが他州に広がれば連邦レベルでのアファーマティブ・アクションの法的基盤も大きく揺らぐことになる。アファーマティブ・アクションは1960年代の公民権運動【こうみんけんうんどう】をピークとするマイノリティ,女性,障害者の長年にわたる運動が獲得した政策だった。施行後30数年を経た米国社会では、もはやマファーマティブ・アクションを必要としないほどに差別が解消されたのかどうかが緊急な課題として問われている。

参考文献

  • 森田ゆり『エンパワメントと人権』(解放出版社、1998)
  • 財団法人東京女性財団『諸外国のアファーマティブ・アクション法制』(1996)
(森田ゆり)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:29 (1300d)