エンパワメント【empowerment】

 この英語は、封建社会の英国で〈権限を付与する〉という意味の特殊用語として使われていたと言われているが,1960〜70年代,アメリカ合衆国内における大規模な社会変革運動のなかでまったく新たな意味をもつ言葉として生まれかわった。em-はen-と同じで〈〜の中、内〉という意味をもつ接頭語,powerは変化をもたらす力。<変化をもたらすための内的な力を取り戻す>という意味あいで,公民権運動、フェミニズム運動,障害者運動,国際的な南北問題の解決をめざす運動などのなかで頻繁に使われてきた。一般に弱者と呼ばれる人々はじつは弱者なのではなく,それぞれの内的な力の発揮を封じる社会の抑圧のメカニズムゆえに弱者の地位に押し込められてきたにすぎない。その社会のあり方を変えることにより個々に内在する能力,行動力,自己決定力を取り戻すことがエンパワメントである。たとえば従来の福祉政策は弱者救済という慈善的発想から行なわれてきた。それに対してエンパワメントは弱者を救済するのではなく,彼らの力を奪ってきた社会の側の問題を指摘し,彼らが内に持つ力を回復するように働きかけるという点で,従来のアプローチと一線を画す。

 米国では80年代の後半頃からは日常用語としてさらに広く浸透し,心理療法,企業内の人材資源活用のあり方などにも使われ,社会変革の視点が風化して理解されることが多くなった。日本では90年代から使われるようになった言葉である。

参考文献

  • 森田ゆり『エンパワメントと人権』(解放出版社、1998)
  • 同『子どもと暴力』(岩波書店、1999)
(森田ゆり)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:30 (1388d)