ゲットー【ghetto】

 都市の特定地域において、共通のエスニックな文化的・社会的・経済的・歴史的背景と信条などを共有する特定集団の隔離・集合居住地域を、一般化してゲットーと呼称される。同時にゲットーは、都市生活でネガティブなもののすべての象徴(たとえば、人口過剰で劣悪な居住環境、高い乳幼児死亡率、疾病率の高さなど)を含んでいる用語である。その言外の意味に人種主義的なものを含んでいる。つまりゲットーは,単にユダヤ人が自発的に居住する場所をいうものではなく,居住を強制される場所となった。

 その起源は,ユダヤ人の最初の入植地が位置していたベネチアの一区域と考えられる。14世紀末までにヨーロッパの多くの都市に,ユダヤ人だけがまったく独占的に居住したのではないとしても,すでに明確に境界を定められた区域が形成された。ゲットーは時代の経過につれて制度となり,慣習として公認され,法律でも明文化された。

 ヨーロッパにおける典型的なゲットーはフランクフルト・ゲットーであった。12世紀後半に形成されたこのゲットーは,都市のもっとも不利な地域に設けられ,城壁に囲まれ,3つの門があって,夜間には錠が下ろされ夜警が警視した。ゲットーは人口も家屋も超過密の様相を呈した。ユダヤ人は,シナゴーグ(会堂)を中心にユダヤ文化の維持に努めた。1711年の大火による全滅にもかかわらず,ゲットーは再建された。1940年につくられ,42年に壊滅したワルシャワ・ゲットーの悲劇も知るべきである。ナチス・ドイツは、ポーランドの至るところにゲットーを設け、ユダヤ人を閉じ込めた。ワルシャワ・ゲットーの面積約4平方キロ、160街区ほどの地区で、およそ50万人のユダヤ人が3年足らずの年月のうちに殺戮された。

 アメリカでは,おもに皮膚の色に基づいて人々をある特定の地域に限定し,選択の自由を制限するという意味がゲットーの概念に加えられた。アメリカの大都市では小シシリー,小ポーランド,チャイナ・タウン,黒人地帯(ダーク・ゲットーdark ghetto)などがゲットー視されることがあった。とくにダーク・ゲットーは,かつてのユダヤ人のゲットーに酷似した病理地区のようにみなされ隔離されていた。ダーク・ゲットーには,〈見えざる防壁〉があり,それは権力を握る白人社会によって,権力を持たない者の無力を永久普遍なものにするためにつくられた。

*セグリゲーション*ユダヤ人差別

参考文献

  • L.ワース『ユダヤ人問題の原型・ゲットー』(今野敏彦訳,明石書店,1994)
  • K.B.クラーク『アメリカ黒人の叫び――ダーク・ゲットー』(今野敏彦訳,同前,1994)
  • E.リンゲルブルム『ワルシャワ・ゲットー』(大島かおり他訳,みすず書房,1982)
(今野敏彦)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:31 (1411d)