ジェンダー【gender】

 生物学的性と区別して、社会・文化的に形成された性の意味。もともとは文法上の性別区分を意味する用語だが、1960年代後半から世界的に広がりをみせたフェミニズム(女性解放思想)の再生のなかで〈男は仕事、女は家事・育児〉という固定的性別役割分業が性差別を形成することが指摘され、社会・文化的に形成される性を意味するこの言葉が性差別撤廃のキー概念とされた。性別役割分業【せいべつやくわりぶんぎょう】が男女に二分化されると、経済活動は男に集中し、女は男の補助者でその性ゆえに無償労働領域:産む、育てる等の役割にとどめられる。また女らしさ:受動的、従順、感情的などの心理特性がしつけ、教育によってつくられ、結果として女の男への従属と性差別が形成される。性差別撤廃のためには、ジェンダー・フリーな教育、役割分担が必要である。日本が1985年に批准した*女性差別撤廃条約にもこの趣旨が明記されている。ジェンダー形成の背景には生物学的性があるという通念があるが、生物学的性もまた、男か女かの二つのみではないが、出生時、医師による新生児の外部生殖器判断よって男女のどちらかに二分化され、ジェンダー形成が始まる。この領域の研究として、60年代にフェミニズム運動から生まれた女性学women's studies、ジェンダー論がある。

 ジェンダーという言葉が日本社会において行政文書にも使われるようになったのは、1995年国連北京世界女性会議以降である。これ以降男女共同参画という日本語をあててジェンダー平等社会の実現を政策化するようになった。また*男女雇用機会均等法、民法など法制改革も行なわれ、ジェンダー平等化政策が推進されている。また女性民間組織では、ジェンダー領域の重要課題として、女性への暴力が人権侵害であり、性暴力は個人の問題ではなく、その防止のためには社会的配慮、政治的対応が必要であることを提言している。最新のジェンダー研究では生物学的性がジェンダーによって形成されるという議論があり、従来の生物学的性が基礎にありジェンダーが形成されるという議論は逆であるという指摘がある。さらにセクシュアリティということばで表現される性的指向性も近年では多様化している。

参考文献

  • 国立婦人教育会館女性学・ジェンダー研究会編著『女性学教育/学習ハンドブック』(有斐閣、1999)
  • 井上輝子編『日本のフェミニズム』全8巻(岩波書店、1994〜95)
  • J.マネー他『性の署名』(朝山新一他訳、人文書院、1979)
  • カミール・バーリア『性のペルソナ』(鈴木晶他訳、河出書房新社、1998)
(國信潤子)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:31 (1294d)