セクシュアル・ハラスメント【sexual harassment】

 性的いやがらせ。1970年代のアメリカ合衆国で生まれた言葉。相手の意に反する性的な言動を指す。60年代以降,北米のフェミニズム運動は性暴力を社会問題として告発し,被害者への支援と啓発活動を展開してきた。そうした市民の動きを受けてアメリカ合衆国では70年代後半から80年代にかけて,他国に先駆けてセクシュアル・ハラスメントを性差別の一つとして公民権法違反行為とみなす法的整備が進んだ。

 日本では80年代の後半から<セクハラ>という略称で知られるようになり,94年(平成6)4月に施行された改正*男女雇用機会均等法21条で,事業主は職場におけるセクシュアル・ハラスメントを防止するために,雇用管理上必要な配慮をすることが義務づけられた。立場や力関係を利用した性的な要求をされ,それを拒否すると解雇・減給その他の不利益を受ける<対価型>と,性的な言動によって職場環境が不快になる〈環境型〉とに一般に大別されているが、実際にはそのどちらにも分類できないケースも少なくない。なお,職場でお茶くみや掃除を女性にのみさせたりする差別的な扱いはセクシュアル・ハラスメントではないが,セクシュアル・ハラスメントを起こす温床になりがちである。このように性的な意味合いのない性差別的な言動を,セクシュアル・ハラスメントと区別するためにジェンダー・ハラスメントと呼ぶこともある。

 セクシュアル・ハラスメントは人の尊厳を深く傷つける人権侵害行為である。被害者は恐れと不安,自責感と無力感にさいなまれ,仕事に行けないなど日常生活に支障をきたす。被害者がそのような大きなダメージを受けていることを知らない人が多いので,<たいしたことじゃないのに><被害を受けた方にも落ち度があった>といった考えが今も根強くあり,被害者の声はこうした社会通念によって封じられている。セクシュアル・ハラスメントは被害者の人権を侵すだけでなく,企業・団体にとっても社会的信用の低下,労務管理上の損失,ときには損害賠償の対象にもなりうるなど,さまざまなマイナスを発生させる。こうしたことを起こさないように,事業主は防止対策に真剣に取り組み,職員への研修を徹底させる必要がある。

参考文献

  • 森田ゆり『エンパワメントと人権』(解放出版社,1998)
(森田ゆり)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:31 (1413d)