ネオ・ナチズム【Neo-Nazism】 

 〈ドイツ国家社会主義労働者党(NSDAP=ナチス)〉が1932年7月の総選挙で第1党となり,翌年1月にその党首ヒットラーが合法的に首相となった。同年3月の〈全権委任法〉によってナチス党以外の政党を禁止,一党支配の独裁制を確立した。全国民に各種大衆組織(ヒットラー青少年団,ナチス学生連盟,ナチス婦人団など)への参加を義務づけ,狂信的・独裁者崇拝の大衆運動に動員した。ナチス党の中心理念は超国家主義,人種主義や反共主義などであり,同党が唱えた〈ヨーロッパの新秩序〉とは,思想的・人種的な画一化にほかならなかった。反体制者(共産主義者,宗教者など)や〈劣等〉とされた者(*ユダヤ人,*ロマ,ソ連人,障害者、同性愛者など)の諸権利を剥奪,強制収容し,その撲滅を謀った。外交の中心は領土拡張による〈第三帝国〉建国の野望であり,39年9月にポーランドへ侵攻,第2次世界大戦を引き起こした。

 ナチス・ドイツ敗戦,〈第三帝国〉崩壊,〈ドイツ国家社会主義労働者党〉禁止以降も,ナチス思想の扇動を試みる極右急進主義運動がネオ・ナチズムである。ナチス思想の中心的理念であった大ドイツ国粋主義,反共主義,反ユダヤ主義【はんゆだやしゅぎ】,反有色民族主義,反障害者主義,つまり社会的弱者・被差別者敵対主義をネオ・ナチ運動はそのまま受け継いでおり,その活動家は〈過去の克服〉を拒もうとするナチスの残党,〈過去への逆戻り〉を企てようとする政治家,史実改竄【かいざん】によるナチス犯罪の否定を試みる研究者,直接的暴力を行使する戦後生まれの若者(スキン・ヘッズ)など雑多である。ネオ・ナチ運動は一方で超国家主義を唱えているが,他方で密接な国際連携を保っている。元〈第三帝国〉のドイツやオーストリアでは〈ナチス犯罪の否定〉や〈ナチス賛美〉が刑法上禁止されているものの,多くのネオ・ナチ組織があり,極右政党の〈ドイツ国家民主党【どいつこくみんみんしゅとう】(NPD)〉や〈共和党【きょうわとう】(REP)〉,〈オーストリア自由党【おーすとりあじゆうとう】(FPO)〉がある。このほかにも,外国人労働者や難民排斥,人工中絶反対,死刑復活などを唱えるネオ・ナチ的色彩の組織や政党は各国にあり,イギリスやフランスの〈国民戦線【こくみんせんせん】(FN)〉などが注目を集めている。さらに,ナチス犯罪の否定・矮小化と〈反ユダヤ主義〉をその使命とする各国の〈歴史修正主義者〉の拠点として,〈歴史見直し研究所【れきしみなおしけんきゅうしょ】(IHR)〉が79年9月にアメリカ・ロサンゼルスで結成され,翌年春からその疑似科学的機関誌『歴史見直しジャーナル』を発行,国際大会を毎年開催している。日本においても『歴史見直しジャーナル』という機関誌を発行する〈歴史見直し研究会〉が97年1月に創立された。

参考文献

  • 山本知佳子『外国人襲撃と統一ドイツ』(岩波ブックレット,1993)
  • P・ヴィダル・ナケ『記憶の暗殺者たち』(人文書院,1995)
(金子マーティン)

トップ   差分 リロード   一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:32 (1300d)