パート労働法【ぱーとろうどうほう】

 1993年(平成5)6月18日制定(法律76号) 正式名は〈短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律〉。目的は〈短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし,もってその福祉の増進を図る〉(1条)となっている。名称や目的が示すように,同法はパート差別・男女差別を禁止するものではなく,経営者に向けて雇用管理上の基準・基本を示したものでしかない。実際,同法には差別の禁止・罰則規定がなく,具体的なことは指針まかせとなっている。また同法では〈短時間労働者〉の定義が,〈1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短い労働者〉(2条)となっており、擬似パート(フルタイム・パート)の取り扱いについては指針で努力規定を記すにとどまるなど、事実上擬似パート差別問題が放置されている。事業主等の責務についても〈通常の労働者との均衡等を考慮して,適正な労働条件の確保及び教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善を図るために必要な措置を講ずる〉(3条)としているが,〈均衡〉の意味があいまいなうえに単なる努力義務規定にとどまり罰則規定がないため,実効性は皆無に等しい。同様に,雇用管理の改善等に関する措置も労働条件に関する文書の交付および就業規則の作成についての努力義務規定があるだけで,迅速かつ実効力ある行政救済機関についての規定がない。公務パート労働者を適用除外としている点も問題である。有期雇用によってパートの権利が低くなっている実情についても,同法はいっさい言及していない。*家族的責任を有する労働者である男女労働者の機会均等及び平等待遇に関する条約(ILO156号条約)の精神を踏まえるなら,パートとフルタイム間の転換権・優先権が保障されていない点も問題である。

参考文献

  • 伊田広行『21世紀労働論』(青木書店、1998)
  • 大脇雅子・中島通子・中野麻実編著『21世紀の男女平等法』(有斐閣選書、1996)
  • 本多淳亮『企業社会と労働者』(大阪経済法科大学出版部、1996)
  • 中野麻美・森ます美・木下武男編『労働ビッグバンと女の仕事・賃金』(青木書店、1998)
(伊田広行)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:33 (1294d)