ヒューマニズム【humanism】

 人間を最高の存在とみなし,人間尊重,人間解放を第一義とする態度や思想,世界観をいう。人間主義,人文主義,人本主義,人道主義などと訳される。訳語の多様さは,時代や立場によって意味が変わることを物語る。

 系譜的には古代のギリシャ・ローマの思想にまでさかのぼることができるが,ヒューマニズムが社会的な運動の思潮となった最初は,15・16世紀のルネッサンス期であり,中世的な教会の権威が人間性を抑圧しているとして,ギリシャ・ローマの学芸を復興させることで人間解放をはかろうとした。人文主義といい,ペトラルカ,エラスムス,モンテーニュなどがその代表的思想家。17・18世紀には,自然科学の発達を背景に,理性こそ人間性の核心だとして,中世的身分制や宗教からの徹底的解放をめざし,人間平等の理念のもとに合理的に人間性を拡充し進歩をはかろうとする思潮で,デカルトに始まり18世紀啓蒙思想家たちにみられる。18世紀後半からドイツに新ヒューマニズムの運動が起こり,啓蒙的合理主義を批判しつつ,ギリシャ古典を重視した人間性の調和的発展をめざした。ウィンケルマン,ゲーテ,シラー,ヘルダーリンがその代表。19・20世紀には,資本主義による人間性の疎外からの解放をはかろうとする社会主義的ヒューマニズムが起こり,マルクス,レーニン,グラムシなどを代表とする。資本主義を前提としつつ,プラグマチズムこそヒューマニズムだとする思潮も現れた。

 日本の場合,明治啓蒙思想以来,上記の諸思潮が次々に入ってきたし,民衆運動にもその主張がしばしばみられたが,なかでも1922年の*全国水平社創立宣言は,被差別者の立場から人間の尊厳をうたい、平等を主張した日本の人権宣言として注目される。

 このようにヒューマニズムはさまざまな思潮によって掲げられた理念であるが,そこではつねに人間とはなにかが問題となり,理性的存在,市民,文明人,あるいは白人や男性などに人間を限定することによって,その範疇外の存在を差別する論理を生みだし,ヒューマニズムの名のもとに残酷な非人間的抑圧がしばしば行なわれた。さらに人間中心主義が自然に対する傲慢を生み,地球の破壊を進行させ,ついには人間の存在そのものを脅かすに至っているとみることもでき,ヒューマニズムは改めて問い直されている。なお,キリスト教,仏教,イスラム教など諸宗教にも人間平等,人間尊重の考えがみられて,ヒューマニズムとされることもあるが,厳密には人間を超越した絶対的存在の是認という点で矛盾する。

参考文献

  • 渡辺一夫『私のヒューマニズム』(講談社現代新書,1964)
  • 西川富雄『現代とヒューマニズム』(法律文化社,1965)
(ひろたまさき)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:33 (1294d)