ファシズム【fascism】

 近・現代社会の政治的・経済的危機を民族的団結と対外侵略で打開しようとする軍事的・政治的体制をいう。第1次大戦後のイタリア(ムッソリーニ)やドイツ(ヒトラー)の国家社会主義運動は当時の恐慌と政治的危機を背景におこり,それに反対する社会主義,民主主義,自由主義者を弾圧して国家的・社会的統合を試みた。

 日本の場合,伝統的な天皇制秩序を利用し軍部と民間右翼が国家改造に乗り出すなかで、〈天皇制ファシズム〉として成立した。軍部は1936年(昭和11)の<2・26事件>で政治的実権を掌握,民間のファシズム運動(北一輝ら)を抑えて国家総動員体制の組織化に成功,議会や政党,労農・社会団体,地方自治体などの諸権利を奪った。植民地支配においても協和会体制や総督府による軍事動員化に成功,戦争への労働力と物資調達の基盤を造り上げた。一方,水平社運動との関連では,1930年代に入り<臣民融和論>にみられるように天皇制への接近は強まり,漸次天皇制ファシズムへの協力を深め,融和事業や日中戦争における軍部協力なども進展した。一部の日本青年団への入団や大日本国家社会党などへの接近などが著名である。

参考文献

  • 思想の科学研究会編『共同研究 転向』上・中巻(平凡社,1959〜60)
  • 秦郁彦『軍ファシズム運動史』(原書房,1980)
  • 日本国際政治学会編『太平洋戦争への道』(朝日新聞社,1987〜88)
(秋定嘉和)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:33 (1294d)