ホームレス【ほーむれす】

 ホームレスという言葉は、わが国では野宿生活者【のじゅくせいかつしゃ】や路上生活者【ろじょうせいかつしゃ】などを意味するものとして使われている。たしかに、彼らは公園・河川敷などでテント生活をしたり、路上や駅周辺で段ボール敷きで寝たりということからして、〈ホーム〉を持たない。しかし、本来、この言葉は、さらに多くの人々を含むものとして、欧米では使われている。すなわち、住所不定者、施設入所者、安ホテル居住者、寮生活の低賃金青年労働者、車中生活者、失業のため親・友人宅の〈居候〉などを包括し、〈自治的な個人の住居のない人々〉を意味する。ホームレスは開発途上国だけでなく先進諸国にもみられ、深刻な社会問題となっている。

〈野宿生活者の増加〉

 1990年代末の経済不況のなかで、野宿生活者の数は急増している。1998年(平成10)8月、大阪市8660人、東京都4300人、横浜市439人、川崎市746人、名古屋市758人、京都市200人、神戸市229人など、全国で1万6247人の野宿生活者の存在が確認された。しかし、これらから漏れた野宿生活者も多いといわれ、全国で約2万人の野宿生活者がいると推測されている。また、99年に入ってさらに増加の傾向が続いているといわれている。

 野宿生活者の増加の要因は、以下の四つが考えられる。第1に経済不況に伴い建設業の高齢日雇い労働者が仕事に就けず長期失業に陥ったこと、第2に、こうした建設業日雇い労働者の失業保険制度が、一般の失業保険制度と異なり(2カ月間に26日就労した者は、3カ月目の失業した日に失業給付が支給される、最高13日まで)、長期の失業に陥るとその給付が受けられない仕組みになっていること、第3に、建設業以外の産業出身者の野宿化も増加しており、失業・倒産・借金などの経済問題と家庭崩壊などの要因が重なって野宿生活に入る者が増えていること、第4に、野宿生活者を、救済し自立を支援していく社会保障施策がまったく整備されていないこともまた、野宿生活者の滞留を促すことにつながっている。

〈進まない施策〉

 こうした野宿生活者の問題が深刻化しつつも、これまで政府は、各自治体の責任であるとして、何ら施策を実施してこなかった。また、自治体にとっては、単独事業として救援策を実施した自治体に多くのホームレスが集中し、また財政支出が増加するなどの問題もあって、具体的な施策の実施を手控える傾向にあった。

 しかし、事態の一層の深刻化のなかで、ようやく99年2月に、政府と大阪市をはじめとする6自治体によって〈ホームレス問題連絡会議〉が創設され、ここに至って初めて政府による野宿生活者問題への本格的な取り組みが始まった。そして同年5月26日〈ホームレス問題に対する当面の対応策〉が発表され、雇用、福祉医療、住宅、安全安心な地域社会、そして自立支援センターの創設という5点にわたって政策のアウトラインが提示された。政府からこうした政策提示がなされたことの意義は大きい。しかし、具体的な各論は示されておらず、今後の具体化とその実行が期待される。

参考文献

  • 連合大阪あいりん地区問題研究会『日雇労働者・野宿生活者問題と連合大阪の課題』(1998)
  • 福原宏幸・中山徹「日雇労働者の高齢化・野宿化問題――大阪に即して」(『社会政策学会誌』1号、1999)
  • ホームレス問題連絡会議『ホームレス問題に対する当面の対応策について』(1999)
  • 「特集 都市とホームレス」(『市政研究』124号、1999)
(福原宏幸)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:33 (1417d)