マイノリティ・グループ【minority group】

 少数者集団。当該社会にあって,その社会から〈はじき出されている(のけ者にされている)〉人々の集団であり,同時に自らも排除されていると考えている人々の集団。それは,不利な立場や恵まれない境遇といった立場にある集団か,政治的抑圧,経済的搾取,社会的差別を総合した立場に対する婉曲的な表現として用いられる一方で,人種・民族・エスニック関係でも用いられる(たとえば少数民族〈ethnic minority,racial minority〉のように)。〈はじき出し〉の口実は,彼らの身体的・文化的特質や部落差別にみられるように〈出自〉をもってする。

 マイノリティ・グループが存在するということは,それに対して,より高い社会的地位や特権をもつマジョリティ・グループ(多数者集団)、あるいはドミナント・グループ(支配集団)があることを意味する。したがって,マイノリティ・グループはドミナント・グループによって,社会生活への全面参加から除外されることとなる。たとえば部落住民・部落出身者は,*同和対策審議会答申が指摘するように,市民的権利・自由の侵害を被ってきた。つまり,職業選択の自由,教育の機会均等,居住および移転の自由,結婚の自由が保障されなかったのであり,今日に至るもなお,とくに結婚・就業の自由が完全に保障されていない。なお,同対審答申は〈同和問題は,日本民族,日本国民のなかの身分的差別をうける少数集団の問題〉と明記している。この〈少数集団〉は,マイノリティ・グループそのものと理解してよい(答申が出された当時,マイノリティ・グループは,少数集団,弱小集団,少数民族などと邦訳されていた)。

 〈*人権教育のための国連10年〉(1995〜2004)の〈国内行動計画〉は,わが国が取り組むべき人権問題の〈重要課題〉として,女性,子ども,高齢者,障害者,部落住民・出身者,アイヌ民族,定住外国人(在日韓国・朝鮮人を含めて),HIV感染者等,刑を終えて出所した人,その他(表記は〈行動計画〉の通りではない)を示している。これらは,すべてわが国のマイノリティ・グループである。さらに,移民集団,難民,ゲイ,レズビアンなど,広汎に及ぶ。

 マイノリティ・グループは,市民的および政治的権利に関する国際規約,独立国における先住民および種族民に関する条約(ILO169号),同107号条約,*人種差別撤廃条約,民族または種族的・宗教的および言語的少数者に属する者の権利に関する宣言(*少数者の権利宣言),*バンジュール憲章など,さまざまな国際人権基準に照らして,その人権が保障されている。

参考文献

  • L.ワース「マイノリティ・グループの問題」(R.リントン編『世界危機に於ける人間科学』下巻、池島重信監訳,新泉社,1975)
  • 今野敏彦「マイノリティ」(上田正昭編『ハンドブック 国際化のなかの人権問題』明石書店、1998)
(今野敏彦)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:33 (1411d)