ラベリング【labeling】

 いわゆる〈レッテル貼り〉〈烙印付け〉【らくいんづけ】などと呼ばれる社会的行為ないし社会過程の総称。だれそれは〈天才〉であるとか,〈有能〉であるとか,プラスイメージの類別カテゴリーを用いる場合も原理的には同じであるが,少なくとも現在,社会学で言われるラベリング論では,〈非行少年〉や〈同性愛者〉など逸脱者の類別化に限定して議論を展開している。類型化把握typificationに伴う差別や排除の問題に,とりわけ注目するからである。あだ名呼びのような私的なアイデンティフィケーションから,〈神経症〉のような公的専門機関による類別化作業,さらには〈ホモ〉や〈レズ〉のような匿名の噂によるレッテル貼りまで,ラベリングによる差別ないし排除の含みは,生活世界の隅々を覆っているといって過言でない。

 医者によって病名をつけられる,薬をもらう,かつ家人などからもそれらしく扱われる,こうして我々は初めて〈病人〉になる。当然、医療機関が増えれば〈病人〉も増える。同様に,少年担当の取り締まりエージェントが増えるほどに〈非行少年〉も増えるのではないか。これが,ラベリング論が問いかけた基本的な問題ないし逆説である。

 つまり従来の議論が,*逸脱行動【いつだつこうどう】に走る事前の原因ないし動機を問いかけていたのに対し,ラベリング論は〈逸脱者〉を特定する類別化作業そのものに着目し,少なくとも公式の〈逸脱者〉は当の類別化作業によって初めてつくり出されると考えたのである。重要な他者によって付与される類別カテゴリーが,じつは我々自身の*アイデンティティになる,という意味でもある。

→スティグマ

参考文献

  • T.J.シェフ『狂気の烙印』(市川孝一・真田孝昭訳,誠信書房,1979)
  • 宝月誠・大村英昭『逸脱の社会学』(新曜社,1979)
  • 徳岡秀雄『社会病理の分析視角』(東京大学出版会,1987)
(大村英昭)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:34 (1358d)