学歴差別【がくれきさべつ】

 学歴(受けた学校教育のレベルや出身校の社会的評価)の差異を根拠として個人を不平等に扱うこと。広義には,学歴の違いを根拠とするあらゆる処遇の差異を指す。しかし学歴が,学校教育を通して個人が獲得した知識や技術のレベルと内容を正しく表示している場合に,その知識や技術の有無がもっぱら問題となる場面において個人の処遇に学歴による差を設けること(たとえば,医学部卒学歴を医師資格付与の条件とすることなど)は,学歴差別といわない方が妥当であろう。また,学歴獲得に関してマイノリティや特定の社会層に不利な条件が存在する社会では,学歴差別と類似の現象がみられたとしても,その本質は部落差別・人種差別・性差別・階級差別などであり,学歴差別とはいえない場合がある。

〈学歴差別の3側面〉

 学歴差別は,学歴が成員の社会的地位の重要な決定要素となっている<学歴社会>に固有の差別である。学歴社会においては,学歴は,用具価値,秩序価値,選抜価値をともに増大させる。学歴の用具価値とは,学校教育における業績としての学歴が,職業的役割遂行に役立つ側面を指す。他方,学歴は一度取得されると,個人に対して一定の資格を終身保障するようになる。これが学歴の秩序価値である。また,この二つの価値が増大すると,人々はこぞって高い学歴を求めるようになり,学歴をめぐる競争が激化する。それにつれて学歴は,希少な人材として選ばれたか否かの証明という意味を備えるようになり,選抜価値を増大させる。学歴差別は,学歴のこの三つの価値に対応して,三つの側面を持つ。第1の側面は,職業取得・就職における差別(学歴条件付きの求人や有名校卒の優先採用など),第2は賃金や職場での地位における差別(学歴別賃金体系や職務・職位配置),第3は個人の評価や人間関係における差別(高学歴者=優れた人物という評価,それに基づく配偶者や友人の選択行動など)である。

〈日本の社会と学歴差別〉

 一般に,産業化の進行に伴って学歴社会化は進行するが,今日の日本は,受けた学校教育のレベルや内容(本来の意味での学歴)よりも,どの学校を出たかということが重視される<学校歴社会>となっており,<教育制度が伝統的なカースト制度の代替物として機能する《保守社会》>(OECD教育調査団)と批判されるように,世界でもっとも学歴差別の激しい社会の一つである。このような<日本型学歴社会>を支えている社会的要素としては,,曚箸鵑鋲学時にのみ選抜がなされる学校の選抜システムと硬直的で序列的な高等教育システム,⊃卦学卒者一括採用,*終身雇用,学歴と年功による昇進・昇給など,企業の学歴――年功的雇用管理,8朕佑魴侘鬚噺書のみで評価するといった<*属性原理>や,大卒ホワイトカラーを標準とした<人並み志向>の強さなどを挙げることができる。学力達成や進学機会に関して部落の子どもたちに不利な条件がなお存在する現状での学歴差別は,部落差別との二重差別となり,深刻な問題である。  

参考文献

  • OECD教育調査団編著『日本の教育政策』(深代惇郎訳,朝日新聞社,1976)
  • R.P.ドーア『学歴社会――新しい文明病』(松居弘道訳,岩波書店,1978)
  • 潮木守一『学歴社会の転換』(東京大学出版会、1978)
  • 刈谷剛彦『大衆教育社会のゆくえ』(中公新書,1995)
  • 竹内洋『日本のメリトクラシー』(東京大学出版会,1995)
(鐘ケ江晴彦)

トップ   差分 リロード   一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:37 (1300d)