逆差別【ぎゃくさべつ】

 マジョリティがマイノリティを不平等に扱うことを差別というのに対して,マイノリティがマジョリティを不平等に扱うことを逆差別という。しかし,マジョリティとは支配的立場ないし力関係において優位に立っている人々のことをいい,マイノリティが被支配的立場ないし力関係において劣位に立っている人々のことをいうことを考えれば,はたしてある種の強制力を伴ってマイノリティがマジョリティを不平等に扱うことができるのかどうか,疑問が多い。たとえば,部落と部落外との結婚において,部落の親の方が,<差別を受け,悔しい思いをするから>と強く反対するような場合,差別からの防衛としての対抗的な行為といえよう。したがって<差別される方も逆に差別しているのだから,どっちもどっちだ>という言い方は詭弁にすぎず,差別する側の自己弁護として使われることが多い。

 逆差別として非難の対象とされるもう一つは,差別をなくすための特別措置である。差別をなくすために、それまで設けられていた不平等な取り扱いを廃絶し,<さあ,もう平等になったから自由に競争しなさい>と言うだけでは,実質的に平等は保障されない。それまでの差別によって歴史的に蓄積されたさまざまなハンディを被差別側が背負っているからこそ,ハンディを克服するための手だて(特別対策)が必要である。たとえば特別対策としてなされてきた*同和対策事業【どうわたいさくじぎょう】,アメリカの*アファーマティブ・アクション,インドのリザベーション・システムなどがある。それらに対して,逆差別だとしてその廃止を求める声が上がってきた。もちろん被差別集団の生活実態や差別の実態は時とともに変化するから,特別対策の必要性や有効性については個別に検討していく必要がある。しかし差別の実態を無視して,特別対策は逆差別だからなくせという議論はあまりにも乱暴である。なお,特別対策は逆差別だというキャンペーンは,民衆のねたみ意識を扇動するかたちで政治的に行なわれることが多い。

*ねたみ差別意識

(野口道彦)

トップ   差分 リロード   一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:37 (1469d)