教育権【きょういくけん】

 <教育を受ける権利>としての教育権は,発達の可能態としての子ども固有の権利であり,基本的人権である。子どもは学ぶ潜在的能力をもって生まれてくるが,その身体的精神的発達のためには良好な教育を必要不可欠としている。ここに教育権の保障が人間の発達と生存の根源的権利とみなされるゆえんがある。

 戦前では,国民の教育は国家統治の一環として国家の独占的権利とされていた。戦後の憲法体制下では国民が教育の権利主体となり,国民こそ教育権発生の根源として位置づけられた。いまや国家は国民の権利としての教育を助成すべき義務を負担するのである。しかし現実には,教育をめぐる環境条件の劣悪と国家の教育支配の強化,能力主義による差別選別教育の激化によって,子どもたちの教育権保障に大きな制約が加えられている。とくに教育権の主要原則である*教育の機会均等と自由が形骸化され,十分機能していない。

 今日,人権と自由のための教育権理論を発展させるためには,子どものおかれている生活現実を直視することが大前提になる。歴史的社会的に形成されてきた部落差別や*民族差別の現実態をリアルに認識して,教育システムを根本的に変革する必要がある。戦後の憲法・*教育基本法のもとでも,部落民に対する教育差別は容易に解消されなかった。1950年代に,部落の子どもの*長欠・不就学者が全国で20万人にも達していたことが象徴的である。

 *部落解放教育が人権の普遍的理念に立脚して,解放の*学力保障と就学進路保障に一貫して取り組み,権力的強制教育と対峙しつつ自立の共同組織化としての解放教育システムを創造発展させてきた。これこそ国民の教育権実現の具体的営為にほかならない。一時期の<国民の教育権論>のように,単に国家の干渉からの自由という発想だけでは,国民の教育要求の組織化と積極的実現にとって不十分である。国民が真の主人公として積極的に住民の教育要求を組織しつつ教育の自立性を確立することが強く要請されている。

*学習権、*発達権

参考文献

  • 牧柾名『国民の教育権』(青木書店,1977)
  • 柳久雄編著『教育基本権確立の視点と課題』(明治図書,1983)
  • 堀尾輝久『人権としての教育』(岩波書店,1991)
(柳 久雄)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:38 (1388d)