血筋【ちすじ】

 血統【けっとう】と同義。個人が親を媒介にして,その祖父母あるいはそれより上の世代の血のつながりのある祖先との間に設定する関係ないし地位をいう。ここでいう〈筋【すじ】〉の観念は,古くは特定の血族の主生業であった稲作の守護霊であるとともに,その血族を守護する霊としての祖先神を意味したといわれる。本来血筋は個人間の生物学的な連鎖的関係をいうが,わが国では,連続性を要求する家の系統,すなわち家筋【いえすじ】と相即して考えられ,特定の家筋に属する個人は,一括してその血筋を引くものとみなされた。しかし,血筋と家筋とは必ずしも一致するものではない。個々の家をとってみても,血筋はつながらなくても,家を継ぐ者があれば家系は存続できたし,家の出自の先祖(本家の先祖)との関係も,直接の血統の関係で結ばれていたとは限らなかった。家筋は,血筋という生物学的事実をこえた社会的観念であるとみるべきである。それにもかかわらず,特定の血族【けつぞく】の血筋を強調することによって,特定の家筋を特別視したところに日本人の人間観および社会観の特徴をみることができよう。上層には,武家・名主・庄屋・草分け・本家・旧家・親方などの家系【かけい】を誇り,指導的立場にある家筋が固定するとともに,下層には,神楽・*田楽・*猿楽・*万歳などの芸能者,山伏・巫女・*陰陽師などの宗教者,また,鍛冶屋・鋳物師・番匠・木地屋・石工・*革屋・紺屋などの技術者の家筋が特別視され,ここに〈筋〉の観念は,人間差別の道具としての方向をたどることになる。

 このような血筋(家筋)による貴賤,尊卑の社会的格付けは,民族差別や職業差別を背景にして直接部落差別に結びつく。とくにそれは,部落差別の根拠をアイヌの子孫やオロッコ族の子孫,あるいは朝鮮人の子孫などとみるさまざまの人種起源論【じんしゅきげんろん】や,特定の職業への従事者に起源を求めようとする職業起源論【しょくぎょうきげんろん】と結びつくことによって,近世以降の身分的差別の維持と強化に対して積極的に機能し,現在でも部落差別意識の根底にそれが残存していることは否定できない。

*門地

(光吉利之)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:39 (1294d)