権威主義的パーソナリティ【けんいしゅぎてきパーソナリティ】

 権威ある者へは同調して服従し,弱い者へは力を誇示してこれを支配するかたちで他者と一体化することにより,自らの不安・孤独・無力の意識を逃れようとするパーソナリティ構造をいう。それは差別者のパーソナリティ構造に重なる。フロムによれば,神や権威から自立した近代人は,孤独と不安に陥る。その時、孤独と不安に耐えることのできない人は,それから逃れようとする。 フロムは,このように不安定でもろい近代人の自我から生じる支配・服従への欲求の二面性を,サド・マゾヒズム的性格と呼んだ。それは,近代社会の一定段階における危機的状況の中で,個人やイデオロギーをこえて広範に形成される社会的性格である。フロムは,1930年代ドイツの,ナチズム台頭期における下層中産階級の精神構造の中にこの典型をみて,もって差別や戦争を支える大衆心理的な基盤の存在を指摘した。

 また,アドルノらは,因襲主義・反内省的態度・*迷信*ステレオタイプ・不寛容【ふかんよう】等の,権威主義を構成する九つの心理的要因に基づいてファシズム尺度を作成し,アメリカ人の権威主義的パーソナリティの測定を行なった。そしてこの性格をもつ人間類型を,*ファシズム,*自民族中心主義(エスノセントリズム),反ユダヤ主義,政治経済的保守主義等、反民主主義的な宣伝やイデオロギーに動かされやすい潜在的ファシストと規定した。

参考文献

  • E.フロム『自由からの逃走』(日高六郎訳,東京創元社,1951)
  • T.W.アドルノ『権威主義的パーソナリティ』(田中義久・矢沢修次郎訳,青木書店,1980)
(青木秀男)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:39 (1300d)