国籍差別【こくせきさべつ】

 主権国家は伝統的に〈自国民〉と〈外国人〉を峻別する体質をもっている。それぞれの国は、だれが自国民であるかを定める*国籍法【こくせきほう】をもっており、子の国籍を親の血統で決める〈血統主義【けっとうしゅぎ】〉か、子の出生地で決める〈生地主義【せいちしゅぎ】〉のどちらかを採用している。日本のように血統主義の国では、外国人は世代交代しても外国人であり、それだけ国籍差別を受けやすくなるが、米国のように生地主義の国では、両親とも外国人であっても子は米国籍となるため、国籍差別は生じないことになる。前者では国籍差別が、後者では*人種差別が問題となる。

 国籍は出生によって取得する以外に、領土変更による国籍変動がある。植民地が分離独立した場合、旧宗主国に在住する旧植民地出身者の国籍がどうなるかという問題が生じる。日本の場合、在日朝鮮人はいっせいに〈外国人〉とされたが、西独在住オーストリア人には、国籍選択権が認められた。英国の場合は、本国と新独立国との間である種の〈二重国籍〉が保障され、英本国では〈外国人〉として扱われなかった。

 主権国家は、人権の尊重、国際協調の進展などに伴って、国籍を理由とする外国人差別【がいこくじんさべつ】に対して抑制的であるべきだとの方向に進んでいる。米国では、1960年代以降、憲法の平等条項に基づいて、外国人を米国市民から差別して不利益に扱うことは〈疑わしい分類〉であり、厳格な司法審査を受けるべきだとの判例が定着している。

 *国際人権規約は内外人平等【ないがいじんびょうどう】を原則としている。セネガル人元仏国兵が軍人年金を減額された件について、同規約人権委員会は、1989年、〈セネガル独立による国籍変更は、差別的取り扱いを正当化する根拠とはなりえない〉との最終見解を表明した。これを受けて仏政府は、仏国人と同様の年金を支給するように改めた。日本では、在日の旧植民地出身者が、国籍を理由に援護政策から排除されているが、同規約の通報制度を受け入れていないため、国連に申し立てることもできない。

*在日外国人

参考文献

  • 原田他監修『ここが知りたい国籍法100題』(テイハン、1995)
  • 奥田安弘『市民のための国籍法・戸籍法入門』(明石書店、1997)
(田中 宏)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:41 (1387d)