国籍法【こくせきほう】

 1950年(昭和25)5月4日制定(法律147号) 日本国民であるための要件を定めた法律。国民たる資格を国籍という。国籍取得と喪失の要件を定める。日本の国籍法は,国籍取得の要件として血統主義を原則としていて,<出生の時に父又は母が日本国民であるとき>(2条1号),その子を日本国民とすると定める。諸外国の例では,父母の国籍を問わず,その国で生まれた子どもはその国の国籍を取得するという生地主義を原則とする国も多い。日本も,生地主義的要素を例外的には取り入れている。現行法は当初,父系血統主義をとっていて,国際結婚で,父が日本人の場合には子どもは日本国籍を取得できるが,母が日本人の場合には子どもは日本国籍を取得できなかった。

 85年の*女性差別撤廃条約批准に伴って,現行のように改正された(1985.1.1施行)。また,日本国憲法が,<日本国民たる要件は,法律でこれを定める>(10条)と規定するにもかかわらず,<サンフランシスコ講和条約>発効直前の52年4月19日,一片の通達(民事甲438号法務府民事局長通達)によって,それまで日本国民とされていた台湾人や朝鮮人の日本国籍が剥奪された。このことが,現在に至る在日韓国・朝鮮人、中国人の法的地位をめぐる多くの問題の原因となっている。

 市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)は,すべての子どもは国籍を取得する権利を有すると定め(24条3項),*子どもの権利条約にも同様の規定があり(7条1項),締約国である日本も,無国籍防止のために最大限の努力が義務づけられている。ところが,フィリピン人と思われる母親が日本の病院で出産直後に失踪したアンドレちゃんの場合,フィリピン大使館が母親の身元不明を理由にフィリピン国籍を認めず,日本の法務局も日本国籍を認めなかったため,無国籍とされてしまった。アンドレちゃんの日本国籍確認を求めて起こされた裁判で,最高裁は,95年(平成7)1月27日,国籍法2条3号の<父母ともに知れないとき>とは,<父または母のいずれもが特定されないときをいい,ある者が父または母である可能性が高くても,これを特定するに至らないときも,この要件に当たる>として,無国籍防止の観点から条文解釈し,子どもの国籍取得を認め,同条による無国籍防止の範囲を広めた。

 また,同じく,自由権規約(26条)および子どもの権利条約(2条)は,出生その他のあらゆる差別を禁止する。ところが,法務省は,現行国籍法の<出生の時に父又は母が日本国民であるとき>(2条1号)の<父又は母>とは,法律上の父または母であることを要すると解しており,〈非嫡出子【ひちゃくしゅつし】〉の場合には,胎内にいる間に<認知>をしていないと,たとえ父が日本人であっても日本国籍の取得を認めない扱いをしている。この扱いが,非嫡出子と嫡出子,胎児認知の子と出生後認知の子との<出生による差別>にあたるのではないかとの指摘がなされている。この点に関連して,最高裁は,97年10月17日,韓国人である母親と日本人であるその前夫との離婚が成立する前に,別の日本人男性との間に子どもが生まれ,前夫の<嫡出推定>(民法772条)のために,本当の父親が<胎児認知>したくても不可能であった例外的なケースではあるが,出生後の認知による国籍取得を認めた。例外的なケースに限ることなく,出生後の認知による国籍取得を広く認めるよう,国籍法の改正が望まれる。

→*婚外子差別

参考文献

  • もりき和美『国籍のありか』(明石書店,1995)
  • 大田季子・谷合佳代子・養父知美『戸籍・国籍と子どもの人権』(明石書店,1994)
(養父知美)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:41 (1388d)