婚外子の人権【こんがいしのじんけん】

 婚外子とは,婚姻関係にない男女から生まれた子どもを意味し,日本の法律では<嫡出でない子>や〈非嫡出子【ひちゃくしゅつし】〉という用語が使われている。人権思想を生み出した近代法の精神は,その人が関与できない事柄で罰してはならないとしている。婚外子にとって,父と母が婚姻関係にあるかどうかは,本人がまったく関与できない事柄であり,婚外子の差別が不当なことはいうまでもない。しかし日本では,婚外子差別が<人権の問題>として取り上げられるようになったのは,ごく最近のことである。日本では,婚外子差別は法律婚家族の保護を理由に正当化され,以下のように,婚外子は法的にも社会的にも差別されている。〔泳900条4項では<嫡出でない子の相続分は,嫡出である子の相続分の2分の1>と規定。1993年(平成5)東京高裁で〈婚外子の相続差別は憲法違反>という画期的な判決が出されるが,95年最高裁大法廷は合憲の判決を出した。

 96年の民法改正の答申では,婚外子の相続差別【そうぞくさべつ】規定の廃止がうたわれている。*戸籍法で,出生届の<父母との続柄>の欄に嫡出子・非嫡出子の区別の記入が義務とされ(49条),<戸籍の父母との続柄表記【ぞくがらひょうき】>も嫡出子の場合は<長男・長女・二男・二女>であるが,非嫡出子の場合は<女・男>である。これは,戦前の長男単独相続の*<家>制度では,婚内で生まれた子の序列が重視されていた名残である。なお,住民票での世帯主との続柄表記も,以前は嫡出子と非嫡出子で異なっていた。婚外子差別の廃止を求める運動により,95年3月から嫡出子も<子>と表記し,認知のある非嫡出子と同じ扱いになった。税法では,離婚・死別に適用されている〈寡婦控除【かふこうじょ】〉が非婚の母では認められず,〈扶養控除【ふようこうじょ】〉では事実上、父(生物学的父)が子を扶養していても,認知がないと扶養控除が認められない。ぜ匆駟歉磴任亙貉匆板蹇擇椶靴てい】に対しては,死別であれば遺族基礎年金【いぞくきそねんきん】が支給され,離婚であれば父からの養育費があっても児童扶養手当【じどうふようてあて】が支給される。ところが,非婚母子家庭の場合,前者は<被保険者の妻または子でない>という理由で不支給になり,後者は1998年7月まで父が認知すると打ち切られていた。コ姐饑劼諒譴汎本人父の間に生まれた婚外子の場合,その父が<胎児認知>していない時は日本国籍【こくせき】がとれない(*国籍法2条)。

 欧米諸国では,<子どもの人権論>の立場から1960年代後半から相続の平等化など婚外子の法的地位が改善され,国連を中心にしてさまざまな宣言・条約が制定されている。さらに,スウェーデンなどでは,<親のいろいろな生き方を認める>という<ライフスタイルの中立論>から,婚外子の法的社会的差別は撤廃され,<非嫡出子>という用語そのものが法律上から排除されている。婚外子差別撤廃への動きは今や国際的潮流となっており,93年、98年の国連の規約人権委員会では,日本での婚外子の差別的扱いが批判され,法改正の勧告が出されている。

参考文献

  • 善積京子『婚外子の社会学』(世界思想社,1993)
  • 善積京子編『非婚を生きたい――婚外子差別を問う』(青木書店,1992)
  • 善積京子『<近代家族>を超える――非法律婚カップルの声』(同前,1997)
(善積京子)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:42 (1358d)