思想差別【しそうさべつ】

 個人の思想・信条を理由に受ける差別。*日本国憲法には,思想の自由(19条)、*表現の自由(21条)がうたわれている。しかし,現実には,思想・表現の自由の抹殺である思想差別がはびこっている。戦前は,天皇制絶対主義の国体護持思想が支配するなかで,国家権力による思想弾圧が露骨な形で行なわれた。その最たるものが,1910年(明治43)のいわゆる*大逆事件【たいぎゃくじけん】である。多数の社会主義者・無政府主義者がデッチ上げにより検挙され,12人が死刑にされたほか多くの者が獄死した。26年(大正15)のいわゆる福岡連隊爆破未遂事件による*松本治一郎らの検挙も,*軍隊内差別に反対する水平社の思想に対する権力によるデッチ上げ弾圧であった。

 このような権力による思想弾圧を支えていたものとして,残念ながら,民衆の多くもまた,共産主義思想をはじめとする反体制思想の信奉者たちに対して,〈アカ〉というレッテル貼りのもとに,思想差別に加担していたことを見逃すことはできない。戦後,民主主義が謳歌されるなかで,その根幹たる思想の自由は尊重されているかのようであるが,現実には隠微な形での思想差別が社会のなかに根を張っている。現代日本における思想差別の典型は,〈過激派【かげきは】〉のレッテル貼りによる思想差別である。たとえば,新聞社の労働組合で,〈部落問題を考えよう〉と提起すると〈あいつは過激派ではないか〉とささやかれるという事例が報告されている。狭山・三里塚・水俣といった人間性の回復が問われている,あらゆる社会問題にかかわる者への思想差別の壁を打ち破ることが,いま求められている。

(福岡安則)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:44 (1388d)