社会権【しゃかいけん】

 資本主義経済の展開がもたらした貧困,失業,疾病などの矛盾を是正し,社会的・経済的弱者に実質的平等【じっしつてきびょうどう】を実現するため社会国家の思想に導かれて20世紀憲法に登場した人権。その先駆はドイツ・ワイマール憲法(1919)である。社会権は階級分化による所与の社会的・経済的諸条件によって位置づけられた生活困窮者,年少者,労働者を名宛人とし,また形式的な自由・平等の宣言でなく,<人間に値する生存>を実質的に確保することを目的とするもので,国の作為義務を前提に積極的な施策・給付の提供を請求できる権利として構成される。*日本国憲法*生存権(25条),教育を受ける権利(26条),*労働権(27条),労働基本権(28条)を掲げている。

〈社会権と部落差別〉

 部落差別は*心理的差別のほか,生活環境,教育,就職,労働の各面で劣悪・低位な実態的差別を惹起させる物心両面にわたる人権侵害事象である。これらの事実上の不平等を除去して実質的平等を実現することは,現代国家の憲法上の責務に属する。継続的な社会権の侵害状況を是正するために,個人の尊厳(13条)を前提として,すべての国民の人権享有性(11条)と非差別平等の権利(14条)を根拠に,1969年(昭和44)の*同和対策事業特別措置法にはじまる一連の特別措置法が制定された。今日では,自由権とともに社会権を享有できる条件を国際的につくり出すために*国際人権規約の社会権規約が生まれ,そのもとに締約国の国内政策を監視する規約人権委員会が設けられている。

*生存権*労働権

参考文献

  • 大須賀明『社会国家と憲法』(弘文堂,1992)
  • 多谷千香子「社会権規約委員会」(『国際人権』2号,1991)
(睫鈞胆 

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:45 (1442d)