社会的緊張【しゃかいてききんちょう】

 このことばは,*ユネスコ第2回総会(1947)が戦争を誘発しやすい国際的対立や不和を解消するために社会諸科学の国際協力を呼びかけた研究計画に由来する。この研究計画の主任(ロバート.C.エンジェル)は社会的緊張を,〈個人間ないし集団間の,敵意ある態度を生むような緊迫的関係であり,敵意は,当の相手に向かって直接発現されることも,また適当な身代わり(*スケープゴート)に対して発現されることもある〉と定義した。しかし,この定義は分析概念としての厳密さに欠けることもあり,顕在化した対立・抗争・闘争や,いまだ顕在化していない潜在的な敵対的態度や不和・闘争などの対立関係などを総称する用語として使われることが多い。とはいえユネスコの問題関心が,国家間の対立や不和だけではなく,国内の民族関係,人種関係,カースト問題にも向けられていたという点は注目される。

 ユネスコの呼びかけに応じて,日本でも〈社会的緊張〉の共同研究が行なわれ,その成果は,『社会的緊張の研究』(1953)に発表された。序説で,尾高邦雄が「ソーシャル・テンションとは何か」の論文で〈社会的緊張〉の概念の検討をしているほか,部落問題関係の論文としては,小浜基次「部落住民の形質について」,豊田武「部落民の差別されるようになった歴史的事情」,鈴木二郎「部落民の地域性,職業,結婚」,小山隆「猊落瓩鳳ける社会的緊張の性格」の4編が収録されている。しかしながら、社会的緊張という概念を使って部落問題を分析しようとする試みは、あまり成功しなかった。

参考文献

  • 日本人文科学会編『社会的緊張の研究』(有斐閣,1953)
(野口道彦)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:45 (1294d)