社会的適応【しゃかいてきてきおう】

 社会と個人が調和した関係、すなわち社会の要請に応じながら、個人の欲求をも満足させる関係を保った状態または過程。ここで重要なのは適応【てきおう】 adjustment と順応【じゅんのう】 adaptation を区別することが多いということである。順応は,外的状況や環境からくる圧力へ自己を一方的受身的に合わせるという意味で用いられることが多く、個体の側からの環境(社会)への積極的な働きかけは含まれない。これに対して適応は,環境(社会)の側からの要請に一方的に自己を合わせるだけでなく、自己が環境(社会)や周囲の状況に働きかけてそれに変化を生じさせることをも含んでいる。したがって社会的適応は,その人のおかれた社会や状況が要請する規範、個人のもつ社会生活の目標価値(社会的成功か個人的内面的充足感か、など)、そして両者の調和をどのようなものであるととらえるかによって規定される。社会的適応がうまくいかない状態を社会的不適応【しゃかいてきふてきおう】というが、本来は社会的適応と社会的不適応は明確に区別できるものではなく、また上記のようにさまざまな側面からとらえ得るものである。とはいえ、その社会の多数派が信奉する規範だけを基準として、社会の少数派や社会的弱者の行動・状態に<社会的不適応>のレッテルが貼られやすいので注意を要する。社会的不適応、またはそのように見える行動は,しばしばその個人が自己を癒そうとする試みであり、また社会の側の矛盾や歪みがそこに反映しているものである。

(田嶌誠一)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:45 (1388d)