社会問題【しゃかいもんだい】

 社会内部において発生したある特定の事態を解決しないでそのまま放置しておくと、その社会の基本理念もしくは体制を揺るがしかねないという危機意識から判断される事態の状況ないしはそのような認識の仕方を指す。ただ、〈社会問題〉には一定の価値観がからみ、その規定は単純ではない。

〈社会問題の構築論〉

 近年有力になっている学説には、J.S.キツセとM.B.スペクターによる構築主義的な社会問題の理解(『社会問題の構築――ラベリング理論をこえて』)がある。彼らは何が社会問題であるかの規定のあいまいさや混乱の原因は、今までの社会学者たちが恣意的な価値観に基づいて社会問題を〈ある種の状態〉とみなしたことにあると批判し、むしろそれを〈ある種の活動〉としてとらえるべきだと主張し、〈社会問題は、なんらかの想定された状態について苦情を述べ、クレームを申し立てる個人やグループの活動である。ある状態を根絶し、改善し、あるいはそれ以外のかたちで改変する必要があると主張する活動の組織化が、社会問題の発生を条件づける〉と規定した。

〈社会問題としての部落問題〉

 この観点を社会問題としての*部落(差別)問題に適用すると、部落問題の発生は当然近代以前にさかのぼるのであるが、それが〈社会問題〉として認識されるのは、その時代において何らかの問題提起ないし告発の活動により可能となる。とくに近代以降になって人権擁護の観点から、部落差別の非人間性が社会に向けて理性的にアピールされ、さらに*部落解放運動の展開によってその不当性について組織的に抗議・糾弾されるようになると、深刻な社会問題として先鋭化していったと理解される。

*寄せ場

参考文献

  • 八木正編『被差別世界と社会学』(明石書店、1996)
(八木 正)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:46 (1388d)