住民基本台帳【じゅうみんきほんだいちょう】

 日本人の居住関係を公証する登録簿。*戸籍が1898年(明治31)戸籍法により住所登録を逸脱し,家(身分関係)の登録簿になったため,1914年(大正3)寄留制度(本籍地以外の一定の場所に90日以上住所または居所を有する者の登録)が設けられる。しかし,戸籍の補完制度だったため,戦中戦後の人口流動化に対応できず,51年(昭和26)に住民登録法【じゅうみんとうろくほう】が成立,住民票【じゅうみんひょう】が登場した。これは自治体の<住民台帳>が発展したもの。したがって国の事務ではなく,自治体の事務なのだが,政府は戸籍との連結を強制(*戸籍附票制度など)、事実上,戸籍の下属事務のように扱われた。その結果,住民の登録でありながら,天皇・皇族,外国人が排除され,住所の中に<世帯主>や戸籍に準じた<世帯主との続柄>が持ちこまれ,本籍・筆頭者が記載されることになる。これはまた戸籍の差別を自治体事務や住民の暮らしに持ちこむことでもあった。

 67年,自治体がもつ選挙や年金,その他の台帳が住民登録と連結されることになる。これが住民基本台帳法【じゅうみんきほんだいちょうほう】である。住民票はそのまま新法に移行したが,主務官庁は法務省から自治省に移された。この結果,住民票の利用が高まり,住民の暮らしに直結するものとなるとともに、住民票の抱える差別が問題にされるようになった。<続柄>上の婚外子差別に異議申し立てが出されたのは75年。86年には住民基本台帳の公開制限が始まり,本籍・筆頭者・続柄を省略した住民票の交付も認められた。しかし,同時にデータのコンピューター化も認められ国民総背番号制【こくみんそうせばんごうせい】への足がかりが開かれた。95年(平成7)3月,自治省は婚外子や養子差別に結びつく続柄を廃止し<子>に統一、国連の廃止勧告(1993)に従った。しかし,同時に住民票のデータベース構想(国民総背番号制)を発表。続柄の廃止はそのための露払いにほかならなかった。このデータベース構想は戸籍と連結したままのもので,人権を脅かす差別情報の大量流出が心配される。と同時に,住民票に関する事務が自治体の頭越しで行なわれるため,自治権の後退が予想される。住民登録事務は本来,戸籍とは別である。戸籍の存在とは別個に,自治体は住民を登録する義務がある。現在,多くの子が戸籍のないまま住民登録されている。これに対して自治省は80年代末以降<登録してはならない>と自治体を指導。これに従う自治体と,自治権を貫く自治体に二分されている現状がある。自治体の中には戸籍に縛られない名前の登録を認めたり,西暦による住民票の記載事項証明を交付するところも出てきており,構想がこの流れに水をさす可能性もある。

参考文献

  • 佐藤文明『戸籍が見張る暮らし』(現代書館,1991)
  • 特集「プライバシーを守る自治体政策とは」(『月刊自治研』464号、1998)
  • 佐藤文明「戸籍・国籍と住民基本台帳ネットワークシステム」(『とちぎ人権ネット・ブックレット』 1998)
(佐藤文明)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:46 (1387d)