色覚差別【しきかくさべつ】

 一般的にいう先天性〈色覚異常〉者に対する差別。具体的には,色覚検査で〈異常〉と判断された者に対する入学,就職,国家試験などでの不当な制限ならびに〈色が見えない〉という誤解や憶測,遺伝的形質からくる偏見を指す。家庭不和や結婚差別の例もみられる。諸外国においては,学校での画一的な検査や入学・就職差別や社会的偏見はほとんど存在しない。

〈色覚異常(者)という呼称について〉

 医学用語で〈色盲〉【しきもう】〈色弱〉【しきじゃく】を総称して〈色覚異常〉といい,それがそのまま社会的な用語として使われているが,色に対して〈盲〉という誤解を与え,不適切であることから新しい呼称が模索されている。日本色覚差別撤廃の会,名古屋市などにおいては〈色覚特性〉と言い表しているが,ここでは,現在のところ比較的広く使われている〈色覚異常〉という表現を用いる。

〈色覚異常とは〉

 〈色覚異常【しきかくいじょう】〉とは、色の見え方(色感覚)が少し違うことである。人の色感覚は,赤,緑,青の3色の合成によって成り立ち,それぞれの色感覚が弱いとされる〈赤(第1)色弱〉〈緑(第2)色弱〉〈青(第3)色弱〉、色感覚が欠けているとされる〈赤(第1)色盲〉〈緑(第2)色盲〉〈青(第3)色盲〉に分類される。〈全色盲〉は,複数の病気が重なって起こるもので、通常,先天的な〈色覚異常〉とは区別される。また,〈青色弱〉〈青色盲〉の存在はいまだ不明とされている。

 原因は典型的な〈性染色体劣性遺伝〉にあり,男性の4.5%,女性の0.2%に出現し,日本での総数は約300万人。女性の場合,現出は少数だが主に保因者として存在し,女性人口の約1割,600万人程度である。

〈色覚検査の問題点〉

 色覚検査は1958年(昭和33)公布の学校保健法で義務化され,かつては頻繁に実施されていたが,95年(平成7)以降,小学校4年生時での1回となった。しかし,インフォームドコンセント(事前の十分な説明に基づく同意),当事者や父母に対するケアはほとんど皆無である。このような画一的・強制的な検査は人権にかかわる問題であり,また,事実上の遺伝子検査とも考えられる。また,無視できないのは誤診の問題である。色覚検査方法には一般的に用いられる石原式検査表のほかにもさまざまな方法があり,結果はそれぞれ異なる。したがって,複数の検査を組み合わせ総合的に判断するのが本来である。

 名古屋市の色覚検診事業の報告によれば、名古屋市の小学校においては石原表,パネルD15テスト,アノマロスコープなどを併用して検査を行なっており,石原表のみの結果は,男子4.8%,女子0.4%に〈異常の疑い〉があり,併用による総合判断は男子4.5%,女子0.2%という結果である。全国の小学校で石原表のみで検出された〈色覚異常〉者のうち,男子の約6%,女子の約50%は正常であり,誤診である。

〈差別の実態と今後の課題〉

 色感覚の違いはわずかであり、日常生活上の不便は生じない程度であるが、〈色覚異常〉者の能力は過小評価され、厳しい入学・就職差別や社会的偏見にさらされてきた。色覚差別撤廃の動きは,86年,高柳泰世医師(名古屋市・本郷眼科)による全国484大学,1822企業と教員採用試験に対する調査に始まった。86年時点で,国立大学の50%をはじめ大学全体の16%強,企業の10%強,教員採用では26県で制限がみられたが,同医師をはじめ,関係者の国への働きかけにより,すべての大学,教員採用もすべての県で制限が廃止された。しかし,政府所管大学校の制限は存続しており,入社制限については,大きな進展はないものと思われる。

 〈色覚異常〉者に対する偏見は根強く,基本的状況は変わっていない。差別撤廃に向けた今後の課題としては、仝醜圓粒惺燦〆困蓮づ事者や家族に精神的負担を強いるだけである。当面,学業遂行上,配慮を要する者に限定した検査への改革。∨姫丗膤惺察た綮座膤惺擦覆廟府所管大学校への入学制限や国家試験,資格試験での制限の廃止。F社制限のほとんどは〈慣例〉によるものである。一律制限をやめ,仕事内容に即した(色識別)能力評価を実施すべきである。また,雇い入れ時の健康診断から色覚欄を削除すべきである。だ験莨紊隆靄榲な権利,義務にかかわる色情報(教科書の刷り色または色づかい,信号,案内板の色など)について改善を進めるとともに,〈色覚異常〉者の意見を取りいれる仕組みをつくること、などが挙げられる。

 現在、色覚差別をなくすために活動している団体としては〈日本色覚差別撤廃の会【にほんしきかくさべつてっぱいのかい】〉がある。同会は小学校での画一的な検査の廃止、入学・就職差別の廃止などを中心に関係省庁への働きかけを重ねているが、最近では、小型船舶操縦士免許の色覚制限緩和などが実現された。また、教科書出版社と協力した刷り色または色づかいのチェック・訂正、各種辞書の色覚に関する差別表現の是正などでも実績をあげている。

参考文献

  • 高柳泰世『つくられた障害「色盲」』(朝日新聞社,1996)
  • 日本色覚差別撤廃の会編著『色覚異常は障害ではない』(高文研,1996)
  • 高柳泰世『たたかえ!色覚異常者』(主婦の友社,1998)
  • 高柳泰世・金子隆芳『色覚異常に配慮した色づかいの手引き』(ぱすてる書房,1998)
(伊藤善規)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:47 (1469d)