人道に対する罪【じんどうにたいするつみ】

 国際社会が抑止し処罰すべき犯罪であるとする<人道に対する罪>という概念は,第2次大戦後、ドイツと日本の戦争指導者およびナチス・ドイツ政権によるユダヤ人などに対する集団的虐殺を含む非人道的行為の責任者を裁くために設置された<ニュルンベルク国際軍事裁判所>と<極東国際軍事裁判所>の条例が、<平和に対する罪>と並んで<人道に対する罪>を定めたことに始まる。 1948年に採択された<集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約>(*ジェノサイド条約)が,集団殺害が国際法上の犯罪であることを確認したうえでその防止と処罰を定めているのも,<人道に対する罪>という文言は用いていないが,上記の二つの国際裁判条例を継承したものといえる。

 その後,<人道に対する罪>が具体的な犯罪行為として国際刑事法廷において訴追の対象になるのは,91年以降旧ユーゴスラビアの領域内で行なわれた国際人道法に対する重大な違反について責任を有する者の訴追のための国際刑事裁判所規程(旧ユーゴ国際刑事裁判所規程)が,殺人,追放,拘禁,拷問,強かんなどの行為を集団殺害と共に訴追すべき犯罪としたことに端を発する。そして,同じ時期に,アフリカのルワンダで行なわれた部族間の集団殺害行為が,ルワンダ国際刑事裁判所によって訴追されることになった。さらに,ローマで開催された国連外交会議において98年7月17日に採択された常設の国際刑事裁判所規程は,<人道に対する罪>に裁判所の管轄権を認めている(3条)。そして,殺害,奴隷化,強制的移動,拷問、強かんなど11の類型を<人道に対する罪>としており,各類型に関する定義を行なっている(7条)。この裁判所規程にみられるように、<人道に対する罪>は,集団殺害,戦争犯罪と並んで国際法上訴追され処罰される犯罪として確立されている。

*国際刑事裁判所

(金 東勲)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:48 (1388d)