生存権【せいぞんけん】

 生存権は*社会権のなかでも原則的地位に立つ現代的人権である。憲法25条1項は<すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する>と定め、同条2項は、〈国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない〉として、国のとるべき社会政策の基調を示している。これを受けて、国の社会政策を実現するための立法として、生活保護法や健康保険法、雇用保険法をはじめとする各種保険法律、児童・老人・母子福祉法、国民年金法等のいわゆる福祉各法が制定施行され、全体として社会福祉体制の整備がはかられてきた。

〈生存権の保障と部落問題〉

 長期にわたり基本的生産関係から疎外されてきた被差別部落における人権確立は,基本的に生存権の保障におかれる。かつて部落の多くは農林漁業に従事,土地条件や漁業権の制約に加えて零細な経営規模,事業内容の不安定などで近代産業の発展から取り残されてきた。かくして部落住民の貧しさが差別を増幅した。同対法は対象地域の生活環境の改善,社会福祉の増進,産業の振興など,国の施策を掲げている。戦後50年を経過した今日,生活実態において部落外との全般的な格差縮小がみられるものの,大学進学率における格差は依然として残され、所得面においても,母子・父子世帯の多さ,不安定雇用,生活保護率,非課税世帯が依然として高いという問題など,生存権保障のための具体的施策の必要性は部落において依然として大きい。

参考文献

  • 大須賀明『生存権論』(日本評論社,1984)
  • 久田恵『ニッポン貧困最前線』(文藝春秋,1994)
  • 中村清二「多様化する差別実態と新たな課題」(『部落解放研究』97号,1994)
(睫鈞胆 

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:49 (1442d)