先住民条約【せんじゅうみんじょうやく】

 1977年、スイスのジュネーブで、アメリカ諸国先住民族に対する差別についての国際NGO会議が開催された。長い間その存在を無視されてきた先住民族が、自ら国際的イニシアチブを握った画期的な出来事であった。会議は、それまで先住民族に対してとられてきた同化・統合主義アプローチを批判し、とくにILO(国際労働機関)107号条約〈独立国における先住民および他の部族・準部族住民の保護と統合に関する条約〉の改正を提案した。89年、*ILOは107号条約を改正し、169号条約〈独立国における先住民族および種族民に関する条約〉を採択。その前文で述べるように、ILOは、〈初期の基準の同化主義的傾向を除去するために、この主題に関する新しい基準を採用することが適当となったことを考慮し、これらの人民が、その生活する国の枠内において、自己自身の制度、生活様式及び経済発展を支配し、その独自性、言語及び宗教を維持し発展させようとする願望を承認〉した。日本はいずれの条約も未批准。また、同会議は、国連差別防止少数者保護小委員会(現国連人権促進保護小委員会)の下に先住民族の権利に関する作業部会の設置を勧告した。この勧告を受けて、82年以来、86年を除いて毎年作業部会が設けられている。この作業部会の主な任務は、各国における先住民族の状況検討と権利に関する国際規範の作成である。93年に〈先住民族の権利に関する世界宣言〉草案が採択された。〈国際先住民族の10年〉(1994〜2003)の最初の年である94年には、この草案の検討を唯一の任務とする作業部会が、人権委員会の下に設置された。しかし、これは政府代表により構成され、先住民族の参加資格が制約されるという問題がある。さらに、先住民族の重要な要求の一つである、領域および天然資源に対する*自決権に対しては、国家の強い反対がある。 資料編A-9

(窪 誠)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:49 (1387d)