全国黒人向上協会【ぜんこくこくじんこうじょうきょうかい】

 黒人の社会的,政治的,経済的な地位向上をめざして*黒人差別【こくじんさべつ】撤廃に取り組んでいるアメリカ合衆国でもっとも古く大きな公民権運動【こうみんけんうんどう】団体。全米有色人(黒人)地位向上協会などと訳される。略称、NAACP。メリーランド州ボルチモアに本部を置き,会員数は約50万人。全米に2200支部を数え,ドイツと日本に海外支部がある。機関誌『Crisis(危機)』を発行。

 南北戦争後の再建期を経たアメリカでは,奴隷解放宣言による黒人の社会進出に対する反動から白人の人種優越思想が過去にもまして強まり,とくに南部を中心に黒人に対する残虐なリンチや人種暴動が増加。1908年8月にはイリノイ州スプリングフィールドで黒人に強姦されたという白人女性の嘘の証言から全米をゆるがす暴動が発生した。このような状況に心を痛めた南部人の著述家ウィリアム・E・ウォーリングはインディペンデント紙に「北部の人種戦争」を発表,アメリカ人の良心の覚醒を訴えた。これに応じて立ち上がった白人と黒人がリンカーン生誕100周年にあたる1909年2月12日,黒人の完全な解放と地位向上についての全国集会への参加を促す呼びかけ文を発表、同年5月にニューヨークで第1回<全国黒人会議>を開催。翌10年5月の第2回大会時にW.E.B.デュボイスが主導したナイアガラ運動と合流した。この大会から現在の名称のもとに,リンチに反対し人種分離制度や差別慣行を打破して真の自由と平等を確立するための法廷闘争を基盤とした活動を開始。公民権運動では多くの成果を収め,現在に至っている。公立学校での人種分離教育は違憲との最高裁判決を得たブラウン訴訟での勝訴は,その後の公民権運動の進展に大きな力を与えた。なお、82年12月日本で開催された*反差別国際会議にはNAACPからも代表の参加があり、部落解放同盟との連帯が始まっている。

参考文献

  • ジョン・ホープ・フランクリン『アメリカ黒人の歴史』(研究出版社,1978)
  • フリーダムウェイズ編『黒い巨人――W.E.B.デュボイス』(小林信次郎訳、山口書店、1988)
  • 猿谷要『アメリカ黒人解放史』(サイマル出版会、1981)
(有田利二)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:50 (1442d)