疎外【そがい】

 若きマルクスが社会認識の確立のために,『経済学・哲学草稿』などで駆使した概念。彼は,眼前の労働者たちのおかれた悲惨な状態の存立根拠を問い,人間が労働生産物・事物・自然に対して単なる商品として,よそよそしいかかわり方をしていること,人間が自己自身に対して,すなわち生命活動たる労働に対して,単なる生きるための手段として,よそよそしいかかわり方をしていること,さらに,人間相互の関係がよそよそしい相互手段視の関係としてあることを見いだし,これを疎外と呼んだ。マルクスは,このような対自然・人間相互間の疎外された関係のうえに,資本家の労働者に対する支配・搾取の階級関係が存立しているととらえた。マルクス自身は,人間相互間における差別の問題を主題化して討究することはなかったが,人間の解放のためには,単なる権力奪取・政治革命だけでなく,人間相互の社会的関係自体を根本的に変革しなければならぬとしたことは,差別問題を考えるうえでも重要な視点である。

(福岡安則)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:50 (1388d)