奴隷【どれい】

 主人に仕え,その支配と命令のもとに労務に服する人。奴隷は売買・譲渡の対象物とされ,人間としての自由も権利も認められない。奴隷はすなわち主人の所有物であり人的財産であって,奴隷自身は自分の財産を取得することも保持することもできず,加えて彼の所有物(時間や労働生産物,技能,その子どもなど),ときには生命までも主人の意のままにされた。奴隷制は,古代ギリシャ・ローマの時代にもっとも栄えた。古代ギリシャ・ローマにあっては,奴隷と主人のみが存在したのではなく,いわゆる自由民(手工業者や農民)が多数存在していた。しかし,これらの人々は奴隷制の発展とともに没落させられた。古代ローマにあっては,奴隷の反乱が激しく,奴隷の反乱そのものがローマの権力を破壊する根本的エネルギーとなった。

 16世紀よりヨーロッパ列強の植民地に、アフリカの人々が奴隷として大量に送り出され、その数は1000万人から2000万人に及ぶ。彼らは仮借なき労働を強制され、しばしば非業の死を遂げている。この数字は,強制的に奴隷化された人々の最小と思われる人数を示しただけであって,奴隷として生まれた人々は含んでいない。デンマーク,オランダ,イギリス,フランス,ポルトガル,スペイン,スウェーデンの植民地とアメリカ合衆国では,奴隷貿易と奴隷制が資本主義本国の経済発展の鍵となっていた。とくにアメリカでは,17世紀に資本主義経済の発展とともに多くの黒人奴隷【こくじんどれい】を必要とした。つまり奴隷経済が行なわれたのである。こうした奴隷制は、リンカーンによる奴隷解放宣言(1863)が行なわれる19世紀後半まで続く。なお,ローマの奴隷制とアメリカ大陸のそれとは,奴隷の身分としてはほぼ類似しているが,両者の決定的差異は,アメリカ大陸では,人種差別が奴隷制のうえに付加されたことであり、彼らの子孫(白人や先住民との〈混血〉も含む)は、今日も差別を受けることが多い。日本の古代においても,*生口【せいこう】という奴隷のことが『後漢書』にみえる。律令体制のもとでの賤民の最下位である奴婢は,奴隷身分に該当するといえよう。

〈現代奴隷制〉

 人間が他の人間を所有するということが、現代世界にも存続している。インドの債務束縛の制度は、およそ650万人にのぼる人々を奴隷状態にしている。バングラデシュやウガンダ北部の女性誘拐(家事使用人として売られる)、1982年に非合法のインドネシア移民が富裕なロサンゼルスの白人に売り渡され、92年にアマゾンの牛の大放牧場や砂糖きび蒸留酒製造所で5000人の男女、子どもが奴隷状態におかれている(奴隷制度廃止インターナショナルの国連報告書による)。人間労働が強制・搾取されうることは、現代に生きている。

→奴隷条約

参考文献

  • F.エンゲルス「家族・私有財産および国家の起源」(『マルクス=エンゲルス全集』21巻,大月書店,1971)
  • S.エルキンズ他『アメリカ大陸の奴隷制』(山本新編訳,創文社,1978)
(今野敏彦)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:52 (1358d)