同情【どうじょう】

 部落解放運動のなかでは〈同情は差別である〉と指摘されている。歴史的には,*全国水平社創立宣言【ぜんこくすいへいしゃそうりつせんげん】の〈過去半世紀間に種々なる方法と,多くの人々とによってなされた吾等の為めの運動が,何等の有難い効果を齎【もた】らさなかつた事実は,夫等の全てが吾々によつて,又他の人々によつて毎【つね】に人間を冒涜されてゐた罰であつたのだ。そしてこれ等の人間を勦【いたわ】るかの如き運動は,かえつて多くの兄弟を堕落させた事を想えば,此際吾等の中【うち】より人間を尊敬する事によつて自ら解放せんとする者の集団運動を起せるは,寧ろ必然である〉の指摘がある。

 一般に,同情は他人と同じ感情を共有することを意味し,共感【きょうかん】と同意語として使われることが多いが,同情は感情のうちでも,悲しみや苦痛といった負の体験への共感に限られる。また同情する者とされる者との社会的位置の上下関係によってみると,〈同情する者〉が上位者で〈される者〉が下位者である場合と,〈同情する者〉と〈される者〉とが対等な位置関係にある場合に分けられる。前者を同情,後者を共感と呼び,両者を区別することができよう。解放運動が拒否してきたのは,差別する側にいる者が,その立場を自覚せずに〈憐れみ〉から発する同情である。しかしながら,部落差別への怒りを共有し,差別から解放への行動を共にしようとする共感を,解放運動が拒否してきたわけではない。

(野口道彦)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:52 (1295d)