同和対策事業特別措置法【どうわたいさくじぎょうとくべつそちほう】

〈意義〉

 1969年(昭和44)7月10日制定(法律60号) 10年を期限とする時限立法。同和地区における〈経済力の培養,住民の生活の安定及び福祉の向上等に寄与することを目的〉とし,国および地方公共団体が実施すべき諸々の事業を掲げている。明治4年(1871)の*〈解放令〉以来,これまでにもこの問題に対処するため若干の財政措置を講じたり,総合計画を立案,実施することもあったが,それらはつねに不十分であり,中途で終わる結果となっている。しかし,本法の成立により,国および地方公共団体は*同和対策事業を迅速かつ計画的に行なうこと,したがって,それに対応する予算措置を講ずることが法的に義務づけられたことは,同和行政史上,画期的な出来事といえる。

〈沿革〉

 1965年(昭和40)8月,*同和対策審議会は,内閣総理大臣の諮問に対する答申を提出した。この答申の〈結語〉のなかに,とくに緊急を要する課題として特別措置法の制定,具体的年次計画の樹立などの6項目が掲げられていた。政府はこれを実施すべく,まず66年3月に,総理府の付属機関として*同和対策協議会【どうわたいさくきょうぎかい】を設置し,この問題の調査・検討にあたらせた。68年3月,同対協は〈同和対策の促進に関する特別措置法案要綱(中間報告)〉を提出。これを受け,国会でも,自民・社会・民社・公明の4党協議会をもち,さらに12月,4党国会対策委員長(副委員長)会談にこの問題を移し,審議・調整を行ない,翌69年4月,〈同和対策事業特別措置法案要綱〉がまとまった。政府は,ただちにこの要綱に基づいて法案を作成し,これを国会に提出。6月12日衆議院本会議で,6月20日参議院本会議でそれぞれ可決された。

 また同法の期限切れを迎えた78年10月には,法が残り1年間では同和対策事業の完遂は不可能とみて,政府は同法の3年延長を内容とする一部改正法案を国会に提出,3項目の附帯決議とともに可決・成立させた(10月18日衆議院本会議で可決,10月20日参議院本会議で可決,成立)。同11月13日公布施行。

〈内容〉

 法は,11カ条からなる。名称からも明らかなように〈事業法〉たる性格を有する。1条では,法の目的を明らかにし,3条,4条では,国民および国・地方公共団体に*同和対策事業【どうわたいさくじぎょう】の実施またはその協力を義務づけている。同和対策事業の具体的な内容は,6条各号に列記されている。事業の対象は,同和地区の生活環境の改善や産業の振興など,もっぱら*実態的差別の解消に向けられ,地区外住民に対する*啓発活動は,従たる地位を占めるにすぎない。しかし事業は,一応全般的,総合的な事項に及んでいる。さらに個々の事業については,*同和対策長期計画において定められている。ここで注意すべきは,6条8号において〈前各号に掲げるもののほか,前条の目標を達成するために必要な措置を講ずること〉という包括規定を設けていることである(本号にあたる規定は,新法である*地域改善対策特別措置法の施行令1条では削除された)。

 7条以下は,同和対策事業に対する国の財政的措置を定めている。第1に,同和対策事業に要する経費のうち,原則として国がその3分の2を負担または補助する(7条)。第2に,地方財政法は,地方公共団体が*地方債【ちほうさい】を発行できる場合を列記しているが(5条1項各号),これに該当しない場合でも同和対策事業に要する経費については,とくに地方債をもって財源とすることができる。しかも,発行した地方債について,国はできる限りその全額を引き受けるべきものとしている(9条)。第3に,地域改善対策に要する経費にあてるため、発行した地方債については,その*元利償還金を,基準財政需要額(国が地方公共団体に分配する地方交付税の額を算定する際の基準となるもの)に算入するものと定めている(10条)。□資料編B-1、B-2

参考文献

  • 総理府編『同和対策の現況』(1973)
  • 内閣総理大臣官房同和対策室編『同和対策事業の手引』(中央法規,1979)
(磯村英一)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:52 (1417d)