難民【なんみん】

〈条約難民〉

 国際法上の難民 refugee の概念は多義的であるが,現在120以上の国家が加入している<*難民の地位に関する条約>(難民条約)に定められている難民の定義(1条)が、もっとも一般的なものであるといえる。この定義によれば,難民の要件は次の三つに分けられる。すなわち,々饑匚顱別宜饑匱圓砲△辰討蓮ぐ柄阿両鏥鐔蟾顱砲粒阿砲い襪海函き⊃夕錙そゞ機す饑劼發靴は特定の社会集団の構成員であること、または政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有すること,9饑匚颪諒欷遒鮗けることができないか,または国籍国の保護を受けることを望まないこと,である。このような難民は<条約難民【じょうやくなんみん】>と呼ばれている。また,この定義は,難民の保護と援助を任務とする*国連難民高等弁務官【こくれんなんみんこうとうべんむかん】(UNHCR)事務所の難民の定義ともほぼ一致している。さらに,この定義は,各国の国内法にも取り入れられ,また難民条約当事国以外の国でも援用されている。

〈広義の難民〉

 しかし,近年,難民条約の難民の定義には必ずしも該当しないが,国際的に保護を必要とする人々が急激に増加している。これらの人々は,迫害の恐怖というよりも,内乱や部族対立,飢餓や疫病などのために国外に逃れた者であって,現に置かれている状態は難民と変わるところのない人々であり,難民条約上の難民と区別して,避難民(流民、displaced person)と呼ばれている。国連は順次UNHCRの権限を拡大し,これらの避難民に対しても保護と援助を与えている。さらに最近は,本国の国内にあって同様の状況に置かれている多数の人々がいるが,これらは<国内避難民【こくないひなんみん】 internally displaced person>と呼ばれている。国内避難民は一国の領域内にいるために,これに対する保護と援助は原則として本国の承諾が必要とされるので,国家主権との関係でその実現には大きな困難が伴っている。なお,これらの避難民や国内避難民も一般には難民と呼ばれることが多い。

〈世界の難民状況〉

 1998年1月現在,UNHCRの支援を受けている人々は2240万人に及んでいる(UNHCRの統計)。その内訳は,難民が1200万,避難国で難民申請をしている者が100万,本国へ帰還してUNHCRの支援を受けている者が350万,国内避難民等が600万である。地域的には,アフリカに738万,アジアに746万,ヨーロッパに605万,ラテン・アメリカに10万,北アメリカに129万,オセアニアに8万となっている。98年に新たに発生した大規模な難民としては,シエラレオネで44万人が隣国ギニアやリベリアに流入した。また、1998年に起こったユーゴスラビア連邦のコソボ紛争【こそぼふんそう】では,60万もの人々がアルバニア,マケドニアなどの周辺諸国に流出している。これらの難民はあらゆる人権を侵害されている人々であり,現在,世界における最大の人権問題は難民問題だといえる。

〈難民問題の解決〉

 難民問題の恒久的解決は,伝統的に,)楾颪悗亮発的帰国,第一次避難国での定住,B荵姐颪任猟蟒察い砲△襪箸気譴討た。現在もこれらの方法は維持されているが,世界には数千万に及ぶとみられる広義の難民が存在する現状においては,そのいずれにも限界がある。そこで,近年は,従来の難民発生後の対症療法的な解決方策から,難民発生前の予防策をより重視する方向が模索されている。たとえば,しばしば難民発生の原因となる武力紛争を封じ込めたり,難民の帰還を容易にする状況を創り出すことである。同時に,複雑な難民問題の解決にとっては,UNHCRだけではなく,国連の他の機関やNATO,欧州安全協力機構,世界銀行,独立国家共同体,アフリカ統一機構などの国際機関の緊密な協力が不可欠であるとの認識が高まりつつある。

参考文献

  • 国連難民高等弁務官駐日事務所編『世界難民白書』(読売新聞社、1994)
  • 本間浩『難民問題とは何か』(岩波新書、1990)
  • 加藤節・宮島喬編『難民』(東京大学出版会、1994)
  • 日本弁護士連合会編『日本における難民認定手続実務マニュアル』(こうち書房、1996)
(川島慶雄)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:52 (1294d)