日雇い労働者【ひやといろうどうしゃ】

 古くは〈日稼ぎ〉〈手間取り〉、戦後は〈自由労働者〉などと呼ばれた日雇い労働者は,文字通り,日々雇用され,日々解雇され、不安定な労働・生活を強いられている賃金労働者の原型のような存在である。彼らは*臨時工・社外工、出稼ぎなどとともに不安定雇用層を形成し,現役の労働者であると同時に労働市場の最下層にあり,つねに失業の危機にさらされている。

〈一般的性格〉

 ―∀の不安定・低収入:〈今日の仕事はあっても明日は保障されない〉日雇いのシステムは,労働者を使い捨てする雇う側=企業の論理に規定されている。さらに日雇い労働は経済不況,公共事業の増減,天候・季節などに直接影響され,就労の不安定と半失業状態が生じる。時間あたりの賃金は中小企業の常雇いのそれと比較して大差があるわけではなく,熟練を要する職種であれば,かえって高賃金でさえある。だが就労日数が極端に少ないため,全体の収入は最低位となってしまう。■械墨働【さんけーろうどう】:日雇い労働といっても,熟練から非熟練まであるが,大半は,非熟練労働で,〈汚い・危険な・きつい〉現場の肉体労働である。過酷な労働現場では労働災害も多く,身体の消耗も激しい。その結果,ケガや病気になれば就労は不可能となり,失業や野宿につながる。社会的無権利状態:日雇いはその労働契約があいまいな場合が多く,さまざまな不利益を被っている。賃金の未払い,労災のもみ消し,不当解雇もけっして少なくない。一応、雇用保険・日雇健保など,日雇い労働者保護をうたった法制度は存在するが,十分機能しているとはいえない。法の不備のうえに,就労日数の不足、業者に対する制度の普及・啓発の不徹底などのためである。

 以上、劣悪な労働条件下にある日雇い労働市場は、他面、学歴や過去の経歴などは一切問わず、一定の体力と働く意欲さえあれば、だれでも参入できる自由な市場である。だから、日雇い労働市場は、常雇い労働市場の失業者や、差別などのためそこに参入できない者が自由に参入することが可能な唯一の労働市場ということになる。従来、就職差別に苦しんできた被差別部落民にとって、行商のような零細自営業などとともに日雇い労働はもっとも重要な就労分野であった。ちなみに1980年代に至っても部落民の被雇用者人口のうち日雇いは平均で10%を優に超えており、全国の日雇い率(約2%強)の3〜5倍と非常に高率である。

〈手配師・人夫出し(飯場)〉

 大都市の日雇い労働者の場合,その多くが〈*山谷〉や〈*釜ヶ崎〉などの〈*寄せ場【よせば】〉に集中し,そこを拠点にして日々就労している。就労は公共職業安定所を通して行なわれる場合もあるが,大半は〈手配師【てはいし】・人夫出し【にんぷだし】〉と呼ばれる民間業者が取り仕切っている。これらの業者は重層的下請構造のもとにある*建設・土木業界にあって最下層に位置し,もっぱら労務供給を業としている。〈手配師〉は電話一本で雇い主の注文に応じ,〈寄せ場〉で労働者を調達し,紹介する。それに対し〈人夫出し〉は,人夫出し飯場【はんば】=建設労働者寄宿舎(有料)を所有し,そこに労働者をつねにプールしておき,雇い主の注文に応じる。したがって昔の飯場とは異なり,今の飯場の多くは,この〈人夫出し飯場〉を指す。もとより,業者によるこの種の有料職業紹介は〈*職業安定法〉上違法であるが、山谷や釜ヶ崎といった特別に指定された地域では,職安への登録業者になることで,経過的措置として合法化されている。ただ,このような就労組織は違法な未登録業者の入り込む余地も多く,大幅なピンハネ(中間搾取),暴力団の資金源となるなど問題は多い。

参考文献

  • 吉田英雄『日稼哀話』(平凡社,1930)
  • 秋山健二郎・森秀人・山下竹史編著『現代日本の底辺』2巻(三一書房,1960)
  • 加藤佑治『現代日本における不安定就業労働者 増補版』(御茶の水書房,1987)
  • 『部落問題 資料と解説 第3版』(解放出版社、1994)
(牛草英晴)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:53 (1358d)