日本国憲法【にほんこくけんぽう】

〈憲法の基本原理と人権規定〉

 日本国憲法(以下,憲法)は,前文と本文11章103カ条の正文からなり,1946年(昭和21)11月3日公布,47年5月3日施行された。憲法の基本原理は*基本的人権の尊重,国民主権(民主主義),平和主義の三つの原理に立脚しているが,国民主権も平和主義も終局において人権(自由・平等)の確立をめざし,そのための不可欠の手段であって,それは本文第3章に詳細に規定されている。憲法は国民の基本的人権の享有,永久不可侵(11条,97条),個人の尊厳と生命,自由,幸福追求の権利(13条),*平等権(14条)をはじめ,多くの市民的,社会的権利を宣言,保障しており,反差別・人権確立に基本法上の根拠を与えている。

〈憲法と部落問題〉

 部落問題は憲法の保障する国民の人権ないし個人の尊厳にかかわる問題であり,とりわけ14条の社会的身分を理由とする差別の問題として,これを具体化する政策や制度を通して解決をはかっていく必要がある。近年進められている政治・行政改革も,冷戦後の国際情勢のなかで高まりつつある国際協力も,国内外における社会的弱者の人権確立につながるものとなるかどうかが,憲法的評価の重要な基準となる。

 ただ,国家の最高意思による<人権>の確認がただちにその問題の解決を意味するものではない。被差別部落のうえに重くのしかかっていた公的・政治的差別の重圧から脱却したとしても,私的・社会的差別の厚い壁は依然として持ち越されているからである。そこに規範と現実との乖離があり,14条などはとりわけ憲法規範と憲法政治との現実のズレを典型的に指し示している事例に属する。人権は対公権力の関係だけでなく,国民(私人)相互間の関係においても尊重・擁護されなくてはならない。

〈憲法と人権政策〉

 人間の尊厳を前提とした非差別平等・人権確立の憲法原理は,解釈と運用(政策の形成と制度)によって補われることを要する。部落問題にあてはめていえば,1969年(昭和44)に*同和対策事業特別措置法が制定されて以来,4半世紀にわたり行政施策が講じられてきた。だが部落差別の撤廃には物的な環境改善事業では限界があり,実質的な生活水準の向上,人権被害の規制・救済,人権教育,社会啓発をカバーした総合的な施策の樹立と実施を必要とする。

 さらに今日では,憲法の人権保障制度は*世界人権宣言(1948),*国際人権規約(1966),*人種差別撤廃条約(1965),*女性差別撤廃条約(1979)などの人権諸条約の国内的受容と条約上の実施措置によって補完されるシステムが出来上がっている。*人権擁護と差別の撤廃はいまや全人類にとって確立された普遍的な法規範に高められており,これを国内法に受容し国内機関として整備することで社会的差別の解消に役立てることが求められている。

*基本的人権

参考文献

  • 稲田陽一『不可侵不可被侵の憲法論』(晃洋書房,1990)
  • 部落解放研究所編『憲法と部落問題』(解放出版社,1986)
  • 中川健一・鈴木佑司・谷元信昭・横田耕一「日本国憲法と国際貢献」(『ヒューマンライツ』65号,1993)
(睫鈞胆 

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:53 (1417d)