貧困の文化【ひんこんのぶんか】

 一群の貧しい人々の中で発達する生活様式。オスカー・ルイスの提起した概念。〈下層階級の文化【かそうかいきゅうのぶんか】〉という言い方もある。〈貧困の文化〉は,高度に階級分化が進行した資本主義社会で,貧しい人々(不安定就労者,半失業者層の人々)が,自らの周辺的な地位に対して示す適応と反発であり,中間階級が価値をおく目標を達成することが,とうてい無理だと直感した結果生じる諦めと絶望感を表現している。したがって下層階級は,中間階級とは異なった価値観をもって行動し,独自の社会システムを形成しているという背後仮説をもっている。

 ルイスの〈貧困の文化〉論は,々人の文化,メキシコ系アメリカ人の文化などを,それぞれの民族的伝統によって説明するのではなく,階層的要因によって説明しようと試みたこと,*下層社会【かそうしゃかい】に欠如しているものではなく,存在するものに注目したことが特徴として挙げられる。しかしながら,〈貧困の文化〉が世代から世代へと継承されていくため,雇用対策や福祉対策を行なったとしても貧困からの脱出は困難であり,貧困の永続化【ひんこんのえいぞくか】が生じるとする主張をめぐって,チャールズ・バレンタインなどから,貧困の永続化を貧しい人々の内部の問題に求め,社会構造の欠陥を隠蔽するものだ,として鋭い批判を受けた。

 1960年代までの部落においては、現象的にはルイスが指摘した貧困の文化の諸側面は認められた。しかし、その後の部落の変貌過程をみれば、いったん貧困の文化が形成されると、社会的上昇のチャンスが与えられても、それを生かしきれず貧困が永続化するという彼の主張の誤っていたことがわかる。

参考文献

  • オスカー・ルイス『貧困の文化』(高山智博訳,新潮社,1970)
  • 同『サンチェスの子どもたち』(柴田稔彦他訳,みすず書房,1969)
  • 同『ラ・ビーダ』(行方昭夫訳,みすず書房,1970)
  • Charles A. Valentaine,Culture and Poverty.(University of Chicago Press、1968)
  • 江口清信編『「貧困の文化」再考』(有斐閣、1998)
(野口道彦)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:54 (1468d)