平等権【びょうどうけん】

〈平等原則の発展〉

 18世紀末に社会的・身分的平等が,19世紀には国政参加における政治的平等が,そして20世紀には経済的平等が社会国家ないし福祉国家の思想に基づいて主張され,今日ではその総和として非差別平等の原理が憲法原理として確立している。わが国では明治維新の際,四民平等に基づいて*〈解放令〉【かいほうれい】が出されたが,法令上の解放にとどまった。その後の*自由民権運動も,*中江兆民のいうように,平民の脚下に呻吟する部落民の存在を人権の問題として告発することはなかった。帝国憲法は公職就任の平等権を宣言しただけで(19条),*天皇制を頂点とする華族や貴族院のような政治的特権の制度をはじめ,民法上の家族制度にみる女性差別、部落差別,在日外国人差別,アイヌ民族差別などさまざまな社会的差別を温存した。

 *日本国憲法14条は,<すべて国民は、法の下に平等であって,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において、差別されない>と近代的平等原則を宣明している。部落差別は社会的身分による差別として憲法によって禁止されることになった。さらに1979年(昭和54)にわが国で発効した*国際人権規約の自由権規約26条は,<すべての者は、法律の前に平等であり,いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権利を有する。このため、法律は,あらゆる差別を禁止し及び人種,皮膚の色,性,言語,宗教,政治的意見その他の意見,国民的若しくは社会的出身,財産,出生又は他の地位等のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護をすべての者に保障する>と,より詳細に規定している。この趣旨から,自由権規約委員会の日本政府報告書の審査では,民法900条4号但書の婚外子が嫡出子と同じ割合の相続分を受け取ることができないとする規定は規約違反だとする強い意見が出されている。

〈非差別平等原則と人権政策〉

 国内社会をみても,性差別,社会的身分差別等の現実は容易に解消し難く,憲法上の平等権を具体化する種々の立法や反差別人権政策の持続的・継続的な裏付けが必要である。この点は女性の権利も同様であって,憲法24条の男女平等主義をもとに女性政策,雇用対策等の諸政策を体現する立法や行政上の施策が伴われなければならない。社会的身分差別としての部落差別の解消のために,65年の*同和対策審議会答申を踏まえて,事業立法として69年以降三度にわたる特別措置法が制定された。戦後におけるこれら一連の同和対策立法は,20世紀憲法における実質的平等を確立するための社会立法として,被差別部落の劣悪な実態的差別の解消に大きな役割を果たした。今日,同和行政は大きな転換期に直面しており,ハード面からソフト面,さらにはハート面へと,言い換えれば事業法から啓発法,規制・救済法へと重点を移しつつある。96年(平成8)に人権の啓発と被害救済の対応策づくりを意図して*人権擁護施策推進法が成立をみたが,憲法14条を具体化する法の制定が今後の大きな課題となる。

参考文献

  • 稲田陽一『憲法と私法の接点』(成文堂,1970)
  • 和田鶴蔵『日本国憲法の平等原理』(三和書房,1971)
  • 友永健三『平和・人権・平等への道』(解放出版社,1984)
  • 睫鈞胆 愼本国憲法と部落問題』(同前,1984)
(睫鈞胆 

トップ   差分 リロード   一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:55 (1354d)