母体保護法【ぼたいほごほう】

 1948年(昭和23)7月13日制定(法律156号) 戦前の国民優生法を引き継いで成立した議員立法。旧称、優生保護法。96年(平成8)の改正で、現行の名称となった。旧法は、1条に<不良な子孫の出生を防止する>とある通り,障害や疾病をもつ人たちが生まれないように人工中絶や避妊手術を強制する一方で,経済的理由や不慮の事故による中絶も認めることで刑法の堕胎罪を免責するという目的をもっていた。同法の背景には<障害や疾病をもつ人たちは世の中に存在しないほうがよい>とする優生思想【ゆうせいしそう】があり,長らく障害者や女性の側から撤廃を求める運動が続けられてきたが,94年のカイロ女性会議で女性障害者が同法の存在を告発,障害者の人権重視の動きが盛り上がるなかで,96年には障害者の出生防止にかかわる部分が削除され,名称も母体保護法と改められた。しかし,近年の急速な遺伝子技術の展開によって,医学界の一部からは<重篤な遺伝性疾患は中絶を認めるべき>とする胎児条項の導入を望む声があがっており,同法が再び障害者の存在を否定する法律となる危険性は消えていない。また,堕胎罪を存続させたまま,女性を依然として<子どもを産む=母体>としか認めない現行法に対しては女性団体から強い批判がある。20世紀初頭以来,<人間の生命には優劣があり,劣性な生命は淘汰されなければならない>とする優生学にも立脚した同様の法律は,欧米諸国でも戦前・戦後を通じて機能していたことが知られており,優生思想の根深さを物語っている。

(姜 博久)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:56 (1387d)