法務省【ほうむしょう】

 国の行政機関の一つで,刑事事件に関する一連の検察事務および検察庁に関する事項,刑の執行や仮釈放・保護観察に関する事項、国籍・戸籍・登記および供託などの民事行政事務に関する事項,基本的人権を擁護し人権侵犯事件の調査・情報収集に関する事項,出入国の管理および外国人の登録に関する事項,などを所轄事務とする(法務省設置法2条,3条)。

 1965年(昭和40)に示された*同和対策審議会答申のなかで,法務省の人権擁護体制の不備が指摘され,その対策強化の必要性を訴えている。3年後の68年になって法務省は,<同和問題に関する人権侵犯事件調査処理に必要な経費>として初めて同和予算を組んだ。69年には*同和対策事業特別措置法が制定され,同法6条7号で,人権擁護機関の充実,人権思想の普及高揚,人権相談活動の推進等を今後の必要な施策として掲げている。70年度の予算では,<人権相談の処理に必要な経費>が計上され,74年度からは<*啓発活動に必要な経費>が,さらに75年度には<ケース研究に必要な経費><同和対策除籍等適正化補助事業【どうわたいさくじょせきとうてきせいかほじょじぎょう】>が予算計上された。

 同和(地域改善)対策事業としては,/邑∋彖曚良甬攅睛隼業【じんけんしそうのふきゅうこうようじぎょう】と,⊃邑∩蠱婿業【じんけんそうだんじぎょう】が取り組まれた。,砲弔い討蓮す岷蕾颪箟撚莢馘の開催のほか,ポスター・パンフレット・その他の印刷物の配布,新聞・広報紙等への掲載,人権擁護担当職員・*人権擁護委員に対する研修会等の開催,人権侵犯事件の調査・処理等が実施されている。△砲弔い討蓮た邑△亡悗垢詭簑蠅杷困鵑任い訖佑燭舛悗料蠱漫助言のために,人権相談所を設けている。人権相談所【じんけんそうだんしょ】には,常設相談所(全国50カ所の法務局・地方法務局およびその支局251カ所に設置)と,特定の日時・場所を決めて設置されている特設相談所がある。97年(平成9),*地対財特法2次改正に伴い,両事業とも一般対策に移行。このほか,86年,87年,88年,91年に<えせ同和行為実態把握のためのアンケート調査【えせどうわこういじったいはあくのためのあんけーとちょうさ】>を実施。また,法務省人権実務研究会編『えせ同和行為対応の手引』【えせどうわこういたいおうのてびき】(1988.4刊)の中で,解放同盟を中傷するとともに,精神障害者に対する差別表現を掲載している。

 法務省における*人権擁護行政を担当する機関は,法務省人権擁護局およびその地方機関である法務局人権擁護部および地方法務局人権擁護課であり,法務局・地方法務局の下部機関である支局でも人権擁護事務を取り扱っている。また国民の人権保障を確実なものとするためには,国や地方公共団体の機関の活動だけでは不十分であり,民間による自主的な活動が重要な役割を果たす。

 法務省における同和対策の取り組みのなかで,次のような問題点が指摘される。第1に量的な問題として,人権担当職員は本省を含め220人にすぎず,とくに全国に50カ所ある法務局および地方法務局の人権担当の専門職員があまりに少ない。また人権擁護委員【じんけんようごいいん】も,法律上は2万人まで置けるが,94年現在1万3514人しかいない。予算も漸増しているが,差別事件の現状に対応したものとはいえない。このため,法務省が取り扱った差別事件の件数は,地方自治体の4分の1程度にとどまっている。また,人権相談所での取り扱い件数も,83年をピークに減少している。第2に質的な問題として,法務省の人権担当職員は専門職ではなく,1〜2年で人事異動している点である。人権擁護委員についても,多くが部落問題に対する理解に乏しく,そのため具体的な差別事件に対処しきれていない。以上の諸点は,<同対審答申>のなかで指摘されているが,今日もなお基本的に改善されていない。

(金井宏司)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:56 (1354d)