迷信【めいしん】

 科学的検証を経ていないにもかかわらず,ア・プリオリに(先験的に)信じられている知識や因果関係の所信を〈俗信【ぞくしん】〉というが,俗信のうちでとくに社会的緊張を引き起こしたり社会的に望ましくない結果をもたらすと思われる知識や所信を<迷信>という。俗信・迷信は<科学的検証の有無>によって科学と対比される。したがって,科学が十分に発達していない時代の知識や所信に俗信や迷信が多いのは当然であるが,現代でも,たとえば,新しい薬なら,深い検討も加えず何にでも飛びつくという新薬マニアのように,俗信や迷信が生み出されることもよくみられる。

〈俗信・迷信の種類〉

 民俗学では,俗信や迷信の種類として,〕獣・前兆(例 鳥の鳴き声が悪いと不幸がある,茶柱が立つと良いことがあるなど),禁忌【きんき】・タブー(例 北枕,友引の葬式,丙午,鬼門などを忌む),K寮蝓Ρ神判断(例 病因,失せ物,縁談,農作の豊凶,商売の成否などを占う),ぜ法・呪文(例 丑の刻参り,護符,不吉な事態に遭遇して<鶴亀,鶴亀>と唱えるなど)にその中心をおき,その他,ヌ唄嵶屠 蔑磧’ド悗戌の日に腹帯を掛けるなどの言い伝え,鰻と梅干しなどの食い合わせなど),ξ邵恩従檗蔑磧*憑きもの,妖怪,幽霊など)などを含めている。

 また,西欧でのある研究の示すところでは,次のような俗信・迷信についての分類を試みている。‥租的宗教的所信(例 天国と地獄の存在の承認),超能力現象(例 念力),M貼僉蔑磧)盻の存在の承認),ぬ多(例 黒猫は不運をもたらす),ダ採醢澄蔑磧〇犲圓箸慮鮨可能),Π枉錣併態(例 ネス湖のモンスターなどの存在の承認),予知能力(例 夢は未来についての情報を提供する)。このように,俗信・迷信の領域は非常に広い範囲にわたっている。

〈俗信・迷信の支え手〉

 歴史的,伝統的に維持されてきた俗信・迷信の支え手は,それになじむことの多かったと思われる老人・年長者に多く見られるが,だからといって必ずしも青年・若年者が俗信・迷信に無縁というわけではない。青年・若年者は卜占・運勢判断のような将来の予知や選択に関する俗信・迷信(手相,星占い,コンピューター占いなど)や,西欧伝来の俗信・迷信(オカルト,13日の金曜日など)には,老人・年長者以上の関心と興味を示している。

 いずれにしても,われわれは老若を問わず,俗信・迷信に多大な影響を受けている。そのなかでも,ことに,<憑きもの家筋>や<魔女>と指摘された人々に対する忌避や排斥は,社会的緊張を呼び起こし,単なる俗信・迷信にとどまらず,その人たちに対するいわれのない*偏見・差別を生み出しているのである。

*憑きもの*祟り

参考文献

  • 民俗学研究所編『民俗学辞典』(東京堂出版,1951)
  • 井之口章次『日本の俗信』(弘文堂,1974)
  • 野村昭『俗信の社会心理』(勁草書房,1989)
(野村 昭)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:57 (1417d)