六曜【ろくよう】

 六曜星・六輝【ろつき】ともいわれ,わが国に広く流布している〈日の吉凶〉*迷信の一つである。先勝(せんしょう・せんかち),友引(ともひき・ともびき・ゆういん),先負(せんぷ・せんぶ・せんまけ),仏滅(ぶつめつ),大安(たいあん・だいあん),赤口(しゃっこう・しゃっく・せきこう)の6種の暦注(暦に併記されているさまざまな事柄)を,旧暦の1月1日を先勝,2月1日を友引,3月1日を先負という順序で配する一方,1月1日は先勝,2日友引,3日先負とあてて循環させる。月の末日で循環は打ち切られ,次の月の暦注が始まるという,きわめて単純な配し方である。しかし,この旧暦に配したものを現行暦に移し換えると一見複雑に見え,それが,〈権威〉づけの効果を生んでいるかのようである。六曜の原形は鎌倉末期から室町初期に中国から伝えられた〈小六壬【しょうろくじん】〉迷信だとされているが,伝来後,暦注や形式に変化があり,江戸中期・享保(1716〜36)から天保(1830〜44)の間にかけて変化し,現在の形となり,人々の間に広がる体裁になったと考えられている。単純な縁起かつぎにすぎないが,今日,民間暦の多くに六曜が記載され,その有無が売り上げに影響するほど人々の生活に浸透している現状は看過できない。

 大安は吉日とされ,今日,結婚はこの日に行なわれることが多い。また友引は先勝と先負の間にあって〈勝負なし〉という意味であるが,葬送に好ましくない日とされ、そのため友引の日には火葬場の多くは開かれないし,この日に葬送を行なうときには人形を棺に添えるという新たな迷信的行為さえ生んでいる。また仏滅は〈空亡【くうぼう】〉という凶日が釈迦の入滅(死)とあたかも関係があるかのような表現に変えられてしまっている。このように六曜は,迷信【めいしん】を受け入れる意識の広がりと,迷信が迷信を生む現実を示す典型的な事例だといえよう。

 部落解放運動,とりわけ社会啓発活動において六曜が注目されるのは,それが広く流布することによって,部落差別を温存し助長する非科学的かつ不合理な心理的態度・意識が醸成されているからであり,部落差別が人々の日常の非科学的で不合理な生活意識に根を下ろしている現実を,生活のなかから変革し克服しようという発想に立つからである。近年,このような発想が注目され,六曜の記載されていない暦や手帳を用いる運動,友引に火葬場を開く取り組み,結婚式や披露宴の見直しなどが,地域を単位として広がりつつある。

参考文献

  • 迷信調査協議会編『日本の迷信』全3巻(復刻版,洞史社,1979)
  • 井元麟之「『六曜』の迷信と差別観念」(『部落解放』70号,1975)
  • 狩野俊猷・羽江忠彦『「六曜」迷信と部落差別』(福岡部落史研究会,1994)
  • 羽江忠彦「六曜迷信と部落差別」(『部落解放』412号,1996)
(羽江忠彦)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:57 (1411d)