憑きもの【つきもの】

 動物霊や人の生霊・死霊などが人に取り憑くという所信のこと。取り憑くとされている動物霊にはキツネ(オサキギツネ,イヅナ,クダギツネ,人狐など),犬(犬神,インガメなど),蛇(トウビョウ,トンボガミなど)などが多い。これらの憑きもの現象は二つの側面をもって立ち現われている。憑依現象の側面と社会現象の側面とである。前者は,異常行動を行なっている個人を一時的に動物霊や生霊・死霊が取り憑いたと見る所信の側面であり,後者は,その個人の異常行動の原因を,その異常行動とは何ら関係がないにもかかわらず,当該社会で伝統的・永続的に動物霊を保持・飼育していて人に取り憑かせるとされる家筋(憑きもの筋)のせいにする所信の側面である。ことに後者の憑きもの筋【つきものすじ】は,それゆえに非憑きもの筋との縁組から拒否されていることが多い。例を山陰のキツネモチ現象にとれば,憑依現象をキツネツキ,社会現象をキツネモチ家筋【きつねもちいえすじ】と非キツネモチ家筋との間の社会的緊張関係とみることができる。現代では,憑依現象を信じている人は非常に少なくなっているが,それにもかかわらず,憑きもの現象が維持されているのは,社会現象としてのキツネモチ家筋に対する*偏見に転化しているからだと考えることができる。

*迷信

参考文献

  • 石塚尊俊『日本の憑きもの』(未来社,1959)
  • 吉田禎吾『日本の憑きもの』(中公新書,1972)
  • 小松和彦編『憑霊信仰』(雄山閣,1992)
(野村 昭)

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Last-modified: 2015-12-03 (木) 21:09:58 (1411d)